2011年4月25日月曜日

「グローバル化するJポップ」シンポジウムに参加して

 421日にダイヤモンド社から『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』を上梓しました。インターネット上の人間関係図「ソーシャルグラフ」を中心に置いて、ソーシャルメディアとの付き合い方を、わかりやすくまとめた本になっています。マーケティングやITの専門家ではない私達が書かせてもらったので、できるだけ視線を低くして具体的に書いたつもりです。是非、読んでみてください。感想を伺いたいです。予告映像がこちらにあります

さて、先週の土曜日23日は、 東京芸大がNHKJ-meloと協力して行ったシンポジウムにパネラーとして参加しました。 北千住駅から数分のところに綺麗なキャンパスがありました。以前は小学校の敷地だったそうです。
 「J-melo」は昨年からNHK総合でも放映されるようになったので、ご存知の方も多いかと思いますが、元々はNHK国際放送で海外向けに、英語でつくられている番組です。出演者も基本は英語で話します。今回のシンポジウム『グローバル化するJポップ』は、東京芸術大学音楽環境創造科の毛利研究室がJ-meloと協力して行った、外国人にとってのJ-popに関するアンケート結果の発表と、それにまつわるシンポジウムでした。出演は、それこそグローバルに活躍なさっているm-floDJ TAKUさんと、J-meloプロデューサーの原田悦志さん、ポピュラー音楽を研究されている早稻田大学教授の岩渕功一さんと、私の四人で、司会は毛利嘉孝先生です。

まず、調査報告とその分析を、毛利さんと3人に学生がやられたのですが、とても面白かったです。大学生(と大学院生)による調査結果発表なので、正直、期待は全然したなかったのですが、良い意味で裏切られました。みなさん、熱いJ-popファンのアンケートを真剣に読み取って、分析を加えていました。
animation」ではなく、はっきり「anime」と書かれていて、日本アニメが一つのジャンルになっていること。若い世代から人気が高いこと。『NARUTO』のタイアップは影響力が大きいこと、などは想定の範疇でしたが、海外におけるビジュアル系のファンは、生花、盆栽なとの日本的伝統にも興味があるという分析にはびっくりしました。70歳のアメリカ人が、「いきものがかり」のファンだったり、その多様性にも驚かされました。継続的に毎年行って欲しい調査です。調査結果はこちらをご覧下さい。

第二部はパネルディスカッションでした。
こちらも有益な話が多かったのですが、m-floTAKUさんの「 J-pop10年間進化してない」という厳しい発言には、自分の反省も含めて考えさせられました。市況が苦しいと、内向きになるし、前例踏襲型になりがちですが、海外マーケットを視野に入れることは、音楽の作品そのものの活性化にもつながるかもしれませんね。と前向きに考えたいです。
岩渕先生や毛利先生から「Jの解釈を決めつけないで、多様化すべき」とのご発言があり、刺激を受けました。プロデューサーとしては「J」をできるだけ拡大解釈して、ビジネスチャンスを広げていきたいです。欧米に対しては「東方神起もJポップの成功例」だと言い放つたくましさを持ちたいと思います。実際、東方神起を売ったのは、日本のプロデューサー陣ですし。

海外での活動に関して、相撲型とサッカー型の二種類があるというお話しも面白かったです。日本の独自性を打ち出しているビジュアル系やアニメは、「相撲型」で、クラブミュージックなどジャンルそのものが世界横断型になっている場合のアーティストは、セリエAで活躍するという「サッカー型」で、作戦も方法論も違うという話です。私は、「大相撲も横綱は外国人だし、J-popもハイブリッド型をイメージした方がよいのでは」と発言しました。後から思ったのですが、日本の武道からオリンピック種目になった「柔道→JUDO型」も入れて、3種類をイメージすると良いのかもしれませんね。
 これを機会に、色々な方との意見交換の場も増やして、積極的に「グローバル化」を推進していきたいです。

この日のシンポジウムに関連するツイートがこちらにまとめられて(トゥギャられて)います
トゥギャッターは、本当に便利なサイトですね。

 私自身は、前半で「五分でわかる音楽業界」と題して、日本の音楽ビジネスの現状をまとめ、後半は、昨年から始まった海外向けのアーティストプラットフォーム「SYNC MUSIC JAPAN」をご紹介しました。当日の資料をスライドシェアにアップしてありますので、興味のある方はご覧下さい。

 グローバルというのは、プロデューサーとしての私のテーマの一つです。これまでもレコーディングやライブツアーなどの海外活動を数多く行ってきましたし、タイ人を所属させてマネージメントまでしました。誠ブログに「グローバルな音楽活動視点でのスイバケ・プロデュース」という原稿を書きました。こちらもご覧下さい。

2011年4月10日日曜日

最近観た映画 ~「英国王のスピーチ」「ツーリスト」「アレクサンドリア」「トスタニカの贋作」「ブンミおじさんの森」

最近観た、映画の感想まとめ。

自分のメモとして書いたものをあっさり公開するのが、「スケスケ社会」のやり方なのかなと、いうことで、今後はブログに記録しておこうと思います。


『英国王のスピーチ』

今年のアカデミー賞作品賞受賞作。吃音を持つ国王の次男が、予想しなかった国王の座について、スピーチを話すようになるのに苦労するという話。オーストラリア人のトーキングトレイナーと英国王の心の交流が描かれています。

 映画の典型的な楽しみ方の一つは登場人物への感情移入して観ることだと思いますが、この映画の登場人物に感情移入をするのは、私には無理でした。もちろん悪い映画ではありません。

第二次世界大戦前のイギリスが美しく描かれているし、深い夫婦愛もあるので、アカデミー賞を取らなければ、もっと褒められていたかもしれませんね。良い映画で、そういう意味では批判が多いのは、大きな賞をとった「有名税」という感じでしょうか?

ちなみに、対抗馬と言われて、脚本賞、編集賞、音楽賞の三章を獲ったものの、作品賞を逃した『ソーシャル・ネットワーク』は去年の秋に試写会で観ました。ITmedia「誠ブログ」に感想を書いたので、興味のある方は、こちらをご覧下さい。
フェイスブックの創業者を描いた、面白い映画でした。でも、アカデミー賞審査員の平均年齢を考えれば、作品賞は無理だったんでしょうね。


『ツーリスト』

アンジョリーナ・ジョリーとジョニー・ディップの豪華共演。予告編が、言葉を選ばずに言うと「あまりにバカバカしくて素敵」と思い、観てみたくなりました。
その後、評論家や映画ライターなどのレビューは、どれも惨憺たる酷評であることを知って、ちょっと腰が引けましたが、勢いで観てしまい、とても満足しています。

私は、昔からいわゆる「単館系」の映画を好んで観る傾向があります。できた頃のシネマライズには、毎月通っていました。でも、子供の頃から007シリーズは大好きだったという過去もあります。
ジェームスボンドが、幾多の困難を乗り越えて事件を解決し、毎回必ずナイスバディーのオネーチャンと懇ろになるというオチは、男の憧れだし、究極の非日常を描いています。実際に起こりえない「夢」を見せるのが映画だとすれば、こんな映画もあって良いはず。アンジェリーナは(ちょっと痩せすぎな気もするけど)常にヒールで颯爽と歩いているし、ヴェネツィアの街も美しいです。

デート・ムービーとしても相手を選ばずに、最適だと思います。ということで、世論には逆らって、オススメ^^

『アレクサンドリア』


歴史大作。四世紀のエジプトが舞台。ちょうど、ローマ帝国がキリスト教化し始めた時代に、科学を信じて殉じたという実在の女性天文学者が主人公。

主演のレイチェル・ワイズは、史上初の女性天文学者を好演。美しいです。
大きな予算を無駄に使わずに、丁寧に描かれていて好感が持てます。奴隷との関係など、現代人の眼ではなく、当時の人たちの価値観で表現しているところも良いと思いました。

 物語は、古代の神々を信じる街の貴族たちが、”野蛮”なキリスト教徒達を押さえ込もうとして、逆に敗れ去るという話。知の象徴である大使館を、”無知な”キリスト教徒たちが焼き尽くします。

主人公の最期も含めて、徹底的にキリスト教徒が悪く描かれているこの映画が、なぜカトリックが強い筈のスペインでつくられ、欧米で普通に上映できているのかが不思議。監督が、特に「反キリスト教」という意図は無く、歴史を忠実に描いていることが伝わったのでしょうか?その辺の事情をご存知の方がいらっしゃったら教えてください。

塩野七生著『ローマ人の物語』の愛読者としては、納得できる四世紀の描き方でした。非常に大雑把な表現になりますが、私の好きなヨーロッパはローマ(とギリシャ)で作られたもので、悪いと思う部分はキリスト教教会の影響だというのが、私の西洋史観です。その観点でも、この映画は申し分ありませんでした。
難しい話ばかりになってしまいましたが、娯楽大作としても楽しめますよ。


『トスカーナの贋作』


とても好きな映画です。なんと形容すればよいのだろう。
イタリア・トスカーナ地方の小さな街が舞台です。宣伝文句としては、大人のラブストーリーみたいになるのかもしれないけれど、陳腐で似合わない気がします。
 こういう映画は、説明するよりも、「良かったよ。観てみたら?」というのが正しい態度な気がしてしまいますね。

蛇足的に付け加えると、トスカーナのアレッツオという街の景色が、とても美しいです。映画の楽しみの一つは、美しい風景と人を見ることですよね?前述の『ツーリスト』が一般的な観光ガイドだとすると、こちらは「地球の歩き方」にも載ってない街の駅に降り立ったような楽しみでしょうか?

もう一つ、私自身は、語学力不足で十分には味わえないのですが、英語とフランス語とイタリア語が会話の中でミックスされていて、音としても美しいし、作品に陰影を与えています。ヨーロッパ人ならば、ここも楽しみ所でしょう。なぜ、この言葉はフランス語で言い、このセンテンスはイタリア語なのか、計算されている脚本です。


『ブンミおじさんの森』


東南アジアを仕事のフィールドに入れている僕としては、タイ映画がカンヌ映画祭のパルムドール(最高賞)を受賞したと聞いて、観ないわけにはいきません。渋谷シネマライズに行ってきました。


 びっくりするくらい、地味な映画です。これに賞を出すとは、さすがカンヌと思いました。タイの田舎が美しく描かれたファンタジーなので、ヨーロッパのインテリが心地よく思うアジアなのでしょう。


 私はバンコクの猥雑な都市文化にタイらしさを強く感じるのですが、確かにこれもタイの魅力の一つですね。死んだ人が育った家に戻ってくるというモチーフは仏教的なので、日本人には飲み込みやすいでしょう。タイが好きの方は要チェックです。


 エンディング曲がタイ語の渋谷系みたいな感じだなと思って聴いていたら、Small Roomという、まさに「タイの渋谷系」を得意とするレーベルの「ペンギンギラ」というアーティストでした。前知識を持たずに行ったのですが、日本にもファンの多い漫画家ポンニミットさんのイラストともコラボしてるし、タイのサブカルチャーフィルムという側面もありますね。


 映画を観てから、検索していたら、アビチャッポン監督のトークショーに関するブログを見つけました。エンディング曲は「高いところから降りてきてください」という曲で、監督は自分には届かない憧憬の気持ちを表したかったとのことでした。




 そんな充実した映画ライフでした。

他には、DVDで『ゲバラ!』と『イングロリアス・バスターズ』を観ました。

『涼宮ハルヒの憂鬱』のシリーズもレンタルで観ています。
これは、自分の中で、「コンテンツの仕事をしている者として、見逃しているアニメを一通りチェックしよう運動」を実施中なので、その一環で借りたのですが、面白いです。そして、この面白さが理解できた自分にほっとしました。
変な言い方ですが、この「オタク的感性」(これだけ多数派になるとこういう言い方も不適切で、単に日本のある世代の感覚というべきでしょう)に共感できたのは、発見でしたし、エンターテインメントコンテンツのプロデューサーとして、自分が「現役感」が持てている気がして、嬉しかったです。シリーズ全部観ようと思います。

2011年4月7日木曜日

My Works:Sweet Vacation

◆profile
通称スイバケ。
タイ人美少女ボーカリストMayと東京大学院生トラックメーカーDaichiによる二人組みのユニット。
ハウスをベースにしたJ-pop。
2008年MySpaceにて活動を開始、iTunesMusicStore「今週のシングル」ダウンロード数の新記録、Yahoo!トップページのニュースにとりあげられるなど、インターネットを活用した最新型の活動が注目された。
2009年5月にビクターエンターテインメントからメジャーデビュー。ミニアルバム4枚、フルアルバム2枚をリリースし、2011年4月に活動休止。
最新作は、初期の代表作にニコ動Pのボーカロイドリミックス集を加えた『スイバケのアーリーベスト+8』

◆producer's note
結成当時ボーカリストがバンコク在住で高校生ということもあり、インターネットに特化したプロモーション活動から始めました。「MySpace」「初音ミク」「セカイカメラ」等々、インターネットでの注目トピックスをいち早く活動に採り入れたことで、注目を集めることができたと思います。何年かやっている内に、このプロデュース手法は、良質の「ソーシャルグラフ」を生成しようとしていたのだと、気づきました。
拙著『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)では、デジタルPRのノウハウを公開しました。またスイバケを積極的に応援してくれた5人のネットユーザーを「スイバケ・キュレーター」と名づけ、座談会を行っています。是非、ご覧ください。
また、海外での活動については、「グローバルな音楽活動視点でのスイバケ・プロデュース」を誠ブログに書いています。
活動休止の際に、関係者の皆様に大きなご迷惑をお掛けしたことは、慚愧に堪えません。私のプロデューサー歴の最大の傷だと思っています。
ユニット活動は休止しましたが、Mayは早稲田大学に通いながら、芸能活動を続けていますので、ご声援お願いします。


◆Discography
※リリース作品はブクログにまとめましたのでご覧下さい。セルフレビューを載せています。


◆リンク一覧
公式サイト
YouTube
公式ツイッター
My Space

2011年4月5日火曜日

My Works : ピストルバルブ

◆profile
10人組のガールズホーンバンド。尚美ミュージックカレッジの学生により2005年結成。当時の平均年齢は19歳。
渋谷のストリートライブで注目され、フジテレビ「ベストハウス123」にレギュラー出演して、全国区に。
2007年3月にはSXSWに出演、アメリカ横断ライブツアーも行う。同年4月R&Cよりメジャーデビュー。
フルアルバムを3枚リリース。

◆producer's note
ストリートライブ→ゴールデンタイムのテレビレギュラー→アメリカツアー→メジャーデビューという道筋は、メンバーの成長のためにも、ユーザーが夢を共有するにも、そしてメディアにおける話題性としても、十分な形ができたと思います。
アイドル的な打ち出しは最小限にして、女性からも憧れられるアーティストに育てたいと思っていました。同時に、エンターテインメントとして大きなスケール感を目指しました。その分、ホームグランドになるシーンの居所を固められなかったなという反省もあります。テレビのゴールデンタイムの視聴者と音楽好きなユーザーの乖離は、想定以上に大きかったです。
08年のヨーロッパツアーでは、日本の音楽に対するヨーロッパでの興味を実感することができました。フランスの高校生がコスプレしている姿は、なかなか衝撃的でした。
教育レベルの高い学校でオーディションしたので、楽器の演奏スキルは高かったのですが、「ブラスバンド部出身」で、決められたことを受け入れる姿勢だった彼女達にアーティストとしての表現力をつけさせていくという育成プロセスは、それまでには無い興味深いプロデュースワークでした。頑張って成長していく姿が見ることができました。

2010年にメンバーが分かれて、ミュージシャン志向の強いメンバーがスピンアウト、ボーカル、ドラム、ベース、ギターを加えて「Scaramble City」を結成しました。新生ピストルバルブは4人となって、「ベストハウス123」には出演を続けていますが、私の手からは離れました。


◆discography
リリース作品はブクログをご覧下さい。セルフレビューを書いています。
特に、デビュー前の初ワンマン、アメリカツアー、ヨーロッパツアーと3本のDVDは、成長の記録となっています。




2011年4月4日月曜日

My Works :東京エスムジカ

◆profile 
2003年結成。在日Korean四世の瑛愛、石垣島出身の平得美帆、東京大学院生の早川大地の3人組。エスノサウンドを採り入れた東京発のポップスを標榜。
インディーズでのミニアルバムリリースを経て、2004年5月にシングル『月凪』で、ビクターエンタテインメントからメジャーデビュー。その後、シングルを計5枚、フルアルバムを3枚をリリースした。


◆producer's note
 ワールドミュージックのエッセンスを入れることで、J-Popに新しいジャンルをつくるというのが、元々のコンセプトでした。別々に育成していた新人を組み合わせて、民族音楽好きの大学院生に、石垣島出身と在日Korean3世のシンガーという三人組に仕立てたのは、グループコンセプトをわかりやすく示めすためでもありました。


 デビューシングル『月凪』が、全国FM局のパワープレイ局数の新記録を更新、リリース前にフジテレビ「めざましテレビ」に出演、石垣島から生中継でライブを行うなど、華々しいデビューをさせることはできました。ただ、メディアを介していく中で、こちらの意図が矮小化されて、「癒し系」的な意味づけをされることも多く、その後の作品と齟齬が出てしまったのが反省点です。まったくの新人(素人)の作編曲で、メジャーシーンで勝負するのは冒険だと思われたようですが、時代を席巻するには新人であっても、オリジナリティで押すという考え方を持っていました。


 そんな理由でレコード会社の意向に抗して、外部クリエイターを登用しなかったのですが、「育てながら勝つ」というテーマを自分に課したのは、ちょっと肩に力が入りすぎていたかもしれません。作詞の在り方などで、メンバーのクリエイティブを守ろうとして、レコード会社のスタッフの気持ちの擦り合わせに、問題が生じたのも反省点です。
 マネージメントとプロデューサーを兼務しているので、ファンやメディアの方にアーティストの実際より大きく見せようとします。「ゲタを履かせる」ということですね。そうやっている間に、本当に背が伸びてくれるのを願ってやるのですが、時に本人が勘違いしてしまうこともあり、その辺のさじ加減も難しいところです。


 海外のリアルな「エスノ音楽家」と、レコーディングができたのは貴重な体験でした。モンゴルでホーミーと馬頭琴を、インドネシア・ジャワ島でガムランとケチャを、書き下ろし曲でアレンジに組み込んだのは意欲的な試みだったと自負しています。ルーマニアのジプシーバンド「マハラライバンダ」をわざわざ来日させて、レコーディングとライブを行ったのは、金銭的には負担でしたが、非常に刺激的でした。
 「卒業」したボーカリスト二人も、その後は幸せな結婚をしたので、ほっとしています。いずれにしても、密度の高い3年間が過ごすことができました。
 瑛愛の結婚式では新婦側主賓で招かれました。結婚相手も在日Koreanの方で、仲人や司会が韓国語で話されているのには驚きました。私のスピーチが最初の日本語だったので、緊張しました。デビュー時に、アーティストプロフィールに在日と載せて、祖父母が心配されていたのを思い出したりして、感無量でした。


 ワールドミュージックへの興味は尽きないので、別の形で、自分のプロデュースワークに取り入れるつもりです。東京エスムジカで行った数々の「実験」については、整理して、近いうちにブログに書きたいと思っています。


◆Discographyリリース作品はブクログをご覧くださいセルフレビューを載せています。


※追記:グローバルな音楽プロデュース活動記録<1>~モンゴル・レコーディング体験記〜をこちらに書きました。

2011年3月29日火曜日

ソーシャルビジネスで貧困を救い、経済史とロボットで未来を視る、美女は平均値のモンタージュ、読書日記<1>

 最近、読んだ本から、面白かったものをピックアップしました。

読書の目的はいろいろあると思いますが、私は「目から鱗が落ちる」という体験が、最大のカタルシスだと思っています。それまで知らなかった価値観や考え方、方法論を知ることで、自分の思考が重層的に深められる(ような気分になれる)ことが、個人的には一番、嬉しい読書体験です。

今回は、そんな本が沢山ありましたので、まとめて紹介します。


『ソーシャル・ビジネス革命~セカイの課題を解決する新たな経済システム』(ムハマド・ユヌス著)

ソーシャルメディアにまつわる本を探していて見つけた本です。同じソーシャルでもインターネットではなくて、社会貢献をするビジネスという意味でした。著者はバングラディッシュ人で、世界的に有名な経済学者です。
ソーシャルビジネスという新しい概念を提唱しています。従来の社会貢献は、NGOや財団など寄付金をベースに行っていたのに対して、継続が可能なように、利益を上げながら、社会貢献をしていくという方法論です。いわゆる企業と違うのは、目的を、「株主利益の最大化」ではなく、貧困の解消などの、社会的な問題の解決に置いていることです。それ以外は、従来の企業と同じで、本書の後半では、ソーシャル企業のみの資本市場の設立まで提案しています。
著者は、最貧困層向けの銀行をつくり、マイクロファイナンスという仕組みを成功させているようです。これは、バングラディッシュの女性に低額のお金を貸し付け、安定的に仕事ができるようにさせる仕組みですが、更にスゴイのは、彼女達が、その銀行の所有者にもなっているということです。組合みたいな感じですよね?一方できちんとした経営管理と事業計画があって、適正な利益を上げながら規模を拡大しているのだそうです。
既存の大企業と連携して、子供の栄養問題を解決するヨーグルト製造販売や、安全な水の販売などでも成果が上がり始めているようです。
非常に興味深い現象ですし、企業の在り方を考えるのによい機会だと思います。この発想ができたのは、アジア的だなと思いました。ツールとしてアメリカ型の企業運営を使いながら、目的が株価的な意味の企業価値の向上では無いところが、素晴らしいです。
日本語訳も読みやすいですし、一読をオススメします。


『経済危機のルーツ~モノづくりはグーグルとウォール街に負けたのか~』(野口悠紀雄・著)

『「超」整理法』などのベストセラーを持つ著者の本業である経済学の本です。1970年代から40年間の世界経済を俯瞰して、日本との関わりの中でまとめています。論理的で非常にわかりやすい本です。
「デリバティブ」などの、何度も耳にしているけれど、意味がよくわからない金融工学の言葉が
初めて理解できたような気がしました。いわゆる「リーマンショック」と言われた、アメリカの低所得者向け住宅ローンの仕組みが何故、破綻したのかも、わかった気分になれました。
一般に流布している、経済や金融に関する、それらしい言説に、いい加減な内容が多いかをチェックすることができると思います。


『ロボットとは何か~人の心を映す鏡』(石黒浩・著)

著者は、人間型ロボット研究において、世界的に第一人者だそうです。通常の発想とは違います。科学と技術と哲学が、自然な形で、著者の脳の中で融合しているような気がします。
「ロボットを知ることは、人間とは何かを知ることだ」という著者は、自分の娘を模したロボットを
つくり、娘の反応を記録し、分析します。自分をモデルにしたロボットをつくり、遠隔操作で動かすことで、他人が自分(のロボット)にどのように反応し、何を感じるか、そういった実験を続けることで、人間の未来を予見しています。
こんな日本人がいて、嬉しいです。


『男女の怪』(養老孟司、阿川佐和子)

ベストセラーエッセイストによる対談です。お二人とも私はファンなので、内容以前に、読んでみたいと思う本なのですが、何でも知っている養老さんと、省略した説明を許さずに、わかりやすい言葉になるまで追い詰める阿川さんのやりとりは、非常に面白いです。
沢山の人のモンタージュをとって、その平均値でつくった顔は美女になる、など、雑学の元ネタとして使える話も盛りだくさんです。


その他、読書記録は、Media Markerにまとめてます。
興味のある方は、こちらからどうぞ

2011年3月22日火曜日

今、大切なこと。 ~プロ野球開幕延期論議で思うこと~

 プロ野球の開幕延期が問題になっています。
 
 日刊スポーツ「セ29日に開幕延期、4・3までデーゲーム」

 パ・リーグは、開幕を4月12日に延期することにましたが、セ・リーグは、一旦、予定通りの開幕を決めた後に、3月29日に変更しましたが、ナイターや東京ドームでの試合の実施についても、明確な判断を示さず、批判を浴びています。

 この問題について、考えみましょう。

私は、プロ野球のペナントレースは行うべきだと考えます。但し、目的は球団の予定していた収益を確保することではなく、被災地にもたくさんいる野球ファン、直接、被災はしていなくても、悲惨な映像を見て、心が荒んでいるだろう日本人のために行うのです。

関東地方の電力に問題があるなら、名古屋以西でやればいいですし、ナイトゲームが問題なら、東日本ではデーゲームのみにすればいい。ただ、それだけのことだった筈です。そういう真っ当な判断ができない、球団経営者の見識の無さ、一部球団の横暴が、事態を難しくしたと思います。

被災地である仙台にフランチャイズがある楽天イーグルスが所属している、パシフィックリーグが、開幕を遅らせるのは良いと思いますが、セントラルリーグは、デーゲームと名古屋以西と限定して、予定通り開幕すればよかったと思います。

実は、子供の頃からの野球ファンの私が気になるのは「延長戦無しの9回終了制」を
導入すると言っていることです。メジャーリーグに引分けが無いのは、よく知られています。なんでもアメリカが正しいとは思いませんが、引き分けも一つの美しさであるサッカーとは違い、決着をつけるのが野球の基本的な様式だと私は思っています。
以前は引分けが多かった日本のプロ野球も、とりあえず12回まではやるようになって、改善したと思っていたところだけに、今回のセリーグの方針は、とても残念です。デーゲームは日没したら翌日に延長戦、ないし再試合をすればいいのです。それでは、興行が成り立たないという考え方は、本末転倒だと思います。
 野球の醍醐味を守ることが、今のような非常時だからこそ、大切なのではないでしょうか?
 「電気が無さそうだから、延長戦はやらない」というのは、野球を大切にする姿勢とは真逆な考え方です。


 プロ野球選手会が、開幕延期を申し入れたのは、一つの見識として評価すべきだと思います。真っ当な感覚をフロントよりも選手が持っていたということになりますね。ストライキの可能性もささやかれていましたが、ストはやるべきでないと思います。野球選手は、プレイを見せることが最大の仕事です。自ら職場放棄をすることは許されません。
 仮にストライキをやるとすれば、「開幕反対」というような小さなテーマではなく、オーナー会議の不見識を正すような、プロ野球機構の抜本的な改革を目的にするべきです。コミッショナー権限の強化も必要でしょうし、親会社の出向者による「互助会」的な運営から脱して、12球団だけでなく、二軍や独立リーグ、実業団も含めて、野球全体をビジネスとして発展させられる組織をつくることは急務です。学生連盟を含めた、野球文化を振興する視野も大切でしょう。

 話がそれました。

 私が今、一番、大切だと思うのは、日本人が100年以上掛けて、育ててきた野球文化を守り、発展させていくという視点です。魅力的なプレイを真摯に観客に見せることが、日本国民に、被災者の方々に勇気を与えると信じて、粛々と野球に取り組むことが、野球そのものを磨くことが、プロ野球関係者の使命です。
 もし、そんな力が無いのなら、そんなプロ野球は要りません。廃れてしまえばいいのです。

 音楽についても、私は同じことを思っています。コンサートをやみくもに自粛することではなく、社会的状況へ配慮をしながら、よい音楽を届けていくことが、今の日本に必要だと信じています。
 もし今、求められないのなら、そんな音楽は要らないのです。

 そんな覚悟と自負を持って、それぞれの持分で最善を尽くすことが、危機だからこそ大切なのではないでしょうか?