2010年11月30日火曜日

LOVE FMの経営移管とFM局の認可について

 名古屋のradio-iの破綻→放送免許返上に続いて、九州のLOVE FMが、経営破綻で事業譲渡しました。このニュースもtwitterで知ったのですが、そのやりとりで、私も含めて、みんなの知識が不十分だったことがわかり、少し調べてみました。
まず、今回の件は、「LOVE FM」(名称と免許)の運営会社が西鉄に代わる。西鉄は、コミュニティFM局、天神FMを運営していたのですが、法律的に2つのFM局は経営できないので、天神FMは廃止される。という内容です。実体としては、法人的には天神FMがLOVE FMを吸収合併して、名称はLOVE FMを名乗るという説明の方がわかりやすいですかね?
天神FMは、老舗のコミュニティFM局で充実した内容と確実なリスナーを持っていました。福岡にプロモーションに行く際は、私のマネージメントするアーティストもよくお世話になっていた局です。それだけに、愛着がある方も多く、天神FMが無くなる事に不満を感じた方がいたようですね。

 FM局に限らず、放送局は、総務省の認可がなければできない事業です。20年位前から数を増やす方針になったようで、現在はNHKを除いて、全国の各県におおむね1局以上のFM局がある状態になっています。
 音楽プロデューサーの現場的な感覚だとラジオ局は
1)NHK
2)FM局の王道という感じで、ほぼ全県にある、T-FM系列の県域のFM局、
3)若者向けの音楽に強い印象のある、2以外のFM局(J-wave、FM802、ZIPFM、north wave等)
4)昔からあって、中高年に強いAM局
5)新興の外国語放送局(InterFM、FMcocolo等)
の5つに分けて、イメージしています。
10年位前までは、FM局が火付け役になったヒット作やアーティスト(宇多田ヒカルが有名ですよね)もたくさんありましたので、地方キャンペーンの主軸はFM局の場合が多かったです。

そんな現場の耳学問的な私の知識は、
ラジオ局は認可ビジネスで、各県の新聞社や地場産業がまとまって親会社になっているのですが、外国語放送局は、新興なので資本が脆弱な場合が多い。その分、県域では認められない広域放送が認められている。
でした。
LOVE FMは、認可的には九州全域で放送できると聞いていて、今は九州北部だけだけど、営業活動がうまくいけば電波塔を増やしていく、というような噂もありました。今回調べて、実際の認可は現状の放送エリアと同じなことがわかりました。認可の趣旨的に九州エリアであれば、認可が得やすいということだったんでしょうね。
twitterのやりとりで、ラジオのお仕事をしている方でも認可のことを知らない方が多くて驚きました。
総務省関係の方にメール等で伺ったところ、
「県域FM局と外国語放送局の免許の違い」は、
放送区域と放送内容の違いだけで、
外国語放送局は、
「県域だと商売にならんということで当初から広域免許になってる由」
とのことです。

以下は、読み出すと頭痛くなるので、詳しく知りたい方のために、引用。
ちなみに、協会の放送→NHK、学園の放送→放送大学、一般放送事業者→民放
だそうです。
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■放送局免許の基本的枠組みは「放送普及基本計画」に定められ、
(PDF資料→http://www2.arib.or.jp/johomem/pdf/1988/1988_0660.pdf )
第1 1(1)ア(ウ)超短波放送 (上記PDFのP2)
第2 2(2)ウ超短波放送 (上記PDFのP10~11)
にあるとおり、
FMラジオ放送は基本的には県域単位でNHKと民放1~2社、
他に外国語放送局が関東・中京・関西・九州の広域圏単位で1社免許。
(外国語放送の放送対象地域を別途定めている告示→
 http://www2.arib.or.jp/johomem/pdf/1995/1995_0052.pdf )
●外国語放送の内容→放送局開設の根本的基準第三条第四項(15)
 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25F30901000021.html
●事業譲渡や経営破たんの状況→ 
 http://radioradiko.blog52.fc2.com/blog-entry-55.html
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

これも初めて知りましたが、
外国語放送は阪神淡路大震災のとき外国人が情報遮断状態だったことを教訓に
1995年から電波の割り当てを始めた新しい放送局だそうです。
「国際交流の増進を目的として、外国語による放送を通じて日本人が海外の文化、産業
その他の事情を理解すること及び本邦に居住又は滞在する多くの国籍の外国人が
我が国の文化、産業その他の事情を理解することに資するものであること」
というのが認可の条件で、初期は全部英語のみで放送とかしてましたよね。
InterFMなどを聴いていると、この基準もだいぶ形骸化しているようですが。

ということで、調べていても、あまり楽しい話ではなかったです。
役所が認可をするビジネスが、時代遅れで倒れていくのは、
広く言えば日本航空とか、銀行とか、日本各所で起きていますよね。
総じて言うと、radio-iやLOVE FMの破綻は、これまで許認可をとれば、必ず成り立っていた
「ラジオ局」というビジネスが、景気の低迷やメディアの多様化で、つぶれることも
あるという、よく考えれば当たり前のことが起きているということだと思います。
テレビのローカル局が、各県ごとに3つも4つもあるのも、維持できないくなるでしょうね。

見方を変えれば、中身でユーザーに支持されることが今まで以上に重要になった訳で、
必ずしも悲観的に捉える必要はないと思います。
音楽を大切にしてくれるラジオマン達の働き場は、無くならないというか、インターネットの発達でむしろチャンスが増えたと思ってもらいたいですね。
そういう意味で、例えばradikoは、「難聴取者対策」という言い訳から脱して、ポジティブなビジネスとして発展して欲しいです。

そう言えば、総務省や放送関係者と話をするときは、放送と通信の「融合」ではなく、「連携」という言葉遣いをしないといけないと、最近、友人から聞きました。あほらしいね。実際は「溶解」なのに。

それから、本稿は、私なりに一通りは調べて書いたつもりですが、門外漢につき、勘違いや間違いがあるかもしれません。遠慮無くご指摘いただけるとありがたいです。

2010年11月27日土曜日

電子書籍は音楽配信の夢を見るか(4)

今回が完結編です。
いささか僭越ですが、電子書籍に提言をして終わろうと思います。

本稿は、出版社のデジタル担当の方向けに勉強会でスピーカーをした際に作成したものです。ですから、編集者の方に対する提言になっています。ちなみに、タイトル「電子書籍は~」も、私がつけたものではありません。A新聞社のS君が決めてくれました。彼が書いてくれた
紹介文は以下の通りです。
「出版コンテンツのデジタル化がもたらす未来とは。 デジタル化されたコンテンツを端末に
詰めて持ち運ぶ時代の波を、2001年の時点で受けていた音楽業界 流行の発信地であったHMV渋谷は消え、大手レコード会社は存在意義を失った。 出版業界の将来を展望するうえで、一歩先をいく音楽業界のたどってきた道を改めて見つめなおす。」


電子書籍に3つの提言

~音楽プロデューサーの立場から~

1.プラットフォームは、公共財と考える
 プラットフォームや技術フォーマットでの覇権争いは不毛。パブリックで透明性の
 高い仕組みを構築し、手数料率を下げ、IT事業者に主導権を握られずにコンテンツ
 側の配分を増やす方法を業界全体で考える。

2.マルチユース発想でプランニングする
 電子書籍を書籍の代替ではなく、多様で成熟した日本の消費者に対応しやすい
 ツールと前向きにとらえ、書籍や書店等の既存の経営資源と連動・補完させる戦略
 をコンテンツ(ジャンル)ごとに構築していく。携帯、タブレット、PC等デバイス
 ごとに対応したプロデュースワークを行う。

3.分配料率を再構築する
 分配料率の考え方そのものを再構築。紙の書籍の読み替えも著者直営(70%)も主流
 には、なり得ない。編集者の役割を著作隣接権的に捉え、企画、宣伝等貢献も数値
 化して検証していく仕組みを持つ。産業として、公平で再生産可能な、新しい分配
 思想をつくっていくことが肝要。

順に解説します。
1.プラットフォームは、公共財と考える
 コンテンツプロデューサーにとって、当たり前ですが、大切なのはコンテンツです。プラットフォームや技術フォーマットは、読者の利便性のために重要ですが、手段に過ぎません。現在の電子書籍に関する議論は、ここの整理が不十分な場合が多いようです。
村上龍さんが新しい電子書籍の会社をつくったのも話題になりましたが、さらっと「技術的な部分がリクープされた後は~」という部分があり、気になりました。デバイスやOSのバージョンアップに終わりはありません。この判断の主導権を持っていないと、IT側の費用がいつまでたってもリクープされない事態になります。実業では、そのことがかなりバイタルなポイントになるのです。読者の利便性を図った上で、作家や出版社などのコンテンツ側にできるだけ高い料率を担保することが、電子書籍における正義の筈です。
 余談ですが、村上龍さんの新しい会社に関する私の見解も述べておきます。音楽の著名アーティストが自分でレーベルをつくる事例に重ね合わせる論評も多かったですが、確かに似ていると思いました。その経験も踏まえていうと、アーティスト主導のビジネススキームが、業界のデファクトになったケースはありません。そういう意味では失敗すると思います。ただ、村上さんやその周辺の作家が、ご自分の料率や納得度が高い形でビジネスをすることができる可能性は十分にあると思います。ただ、これも音楽の例になぞらえるとすると、そこから才能ある新人アーティストが出てくるケースが非常に少ないのも、偶然とは言えない気がしています。
 角川歴彦さんが、著書の中で、日本国産クラウドの必要性について語られていましたが、私は、強く共感します。

2.マルチユース発想でプランニングする
素晴らし書籍をつくるというノウハウは、職人的なものでしょうから、どうしても、ディテールのノウハウに固執してしまいがちです。その職人芸を守ることも重要だと私は思います。ただ、デジタルコンテンツというカテゴリーができたときから、音楽も小説も映画も写真も(プロ野球チームも?)同じコンテンツなのです。従来の発想にとらわれずに、様々なデバイス、シチュエーションでユーザーを楽しませる、感動させるということを追求するのがこれからの編集者の責務の筈です。
また、従来のカテゴリーも意味がありません。音楽やテキストや写真や動画という枠を超えた新しいジャンルのコンテンツでヒット作をつくることが、本当に意味でも市場の活性化です。不肖、私もそんな新しい作品つくりにコンテンツプロデューサーとして関わりたいと思っています。

3.分配料率を再構築する
 レコード会社と同じ過ちを犯してはなりません。CDの読み替えで音楽配信の料率を決めようとしたことは、日本の音楽業界の発展のためにはマイナスでした。電子書籍も紙の書籍の料率をベースにするのではなく、0ベースから分配比率を考えていくことをお薦めします。同時に「作家とプラットフォームと読者がいればいいのだ、iPhoneなら70%だ」という論理も、ビジネスという観点では私は間違いだと思っています。音楽では、レコード製作者に著作隣接権が認められています。(この場合のレコード製作者の定義にもいろいろ問題があるのですが、それはともかく)編集者も同様の立場が認められて、しかるべきです。音楽における原盤権の発想も参考になるかもしれません。リスクを負って新しい才能を育て、プロフェッショナルなスキルで商品をユーザーに届ける自分たちのノウハウを、言語化し、数値化することが、電子書籍の時代には必要なのでは無いでしょうか?個人の集積だけでは達成できない、生態系をつくってきたという自負を、出版社が持つべきだと私は考えます。

以上が、音楽プロデューサーから出版社で働く編集者の皆さんへの提言です。

ご無礼があったらお許し下さい。
また、門外漢であるが故の、思い違いもあるかもしれません。遠慮無くご指摘下さい。
出版社以外の立場の方からのご批判も甘受します。
これを機会に論議を深めていけたら嬉しいです。

このような機会を設けて下さったエミューの会の皆さんに感謝しつつ
当日のプレゼンテーションシートを下記に公開しました。
ご興味のある方は、ご覧下さい。
http://www.slideshare.net/NorikazuYamaguchi/ss-5960417

2010年11月23日火曜日

電子書籍は音楽配信の夢を見るか(3)

今日は、まず、音楽業界のCDと配信の料率の話をしようと思います。

いわゆるレコード会社、メジャーレーベルで新人アーティストが契約する場合の条件はこんな感じです。

 アーティスト印税が1%というのは、びっくりするような低さだと思います。ただ、実際は、これまではレコード会社がアーティスト育成費を払うなどの形で、無名でも、アルバイトをしないで音楽活動に専念できる環境を数年間用意するというのが一般的でした。アーティストは安易に「給料」という言い方をしますが、専属契約をすることの対価ですし、平たく言うと、売れるまでの間、音楽活動に専念させるための先行投資です。
 楽曲の権利(著作家印税)は、業界慣習で確保されていますし、売れれば、アーティスト側とレコード会社の力関係が逆転していくのも一般的で、洗練された仕組みが出来上がっていました。一部の業界外の方が「搾取の構造」と言うことがありますが、的外れだと私は思います。ただ、CDが売れなくなっていく中で、レコード会社が"世知辛く"なっていて、「洗練された仕組み」が成りたくなっているのが昨今でもあります。

 さて、音楽配信の料率の話です。レコード会社は、アーティストおよび事務所に対して、パッケージ契約の読み替えで、対応しようとしました。返品控除や、ジャケット控除という名目が契約書にあるので、論理的に破綻していたと思います。私達事務所の立場だと受け入れがたいものでした。法律論的に言うと、「送信可能化権」というパッケージで売る(複製権)とは別の概念も認められ、配信については、別のロジックで考えるのが正しいと思います。
音楽制作者連盟が提唱した、論理的かつ現実的な分配モデルは下記の通りです。配信事業社(CP)と取り分は、もう少し圧縮できる場合も多いと思いますが、、。

 いずれにしても、電子書籍においては、紙の書籍の読み替えではない、別のロジックの組み立てが必要だと思います。

 さて、本稿の1で、日本の音楽配信はモバイルが9割弱であるということをお話しましたが、そのモバイルの7割強をレコチョク(レコード会社直営着うたサイト)が占めていると言われています。データは発表されていないのですが、各社モバイル担当に聞いても7割は超えているとのことでした。レコチョクは、大手レコード会社が共同出資した会社です。他のCPから見ると、独禁法違反の疑いもあると思うのですが、何故か大丈夫でしたね。
 また、音楽事務所社長の立場で言うと、アーティスト側に、パッケージの読み替えの印税を強要しておいて、着うたマーケットを独占しているのは理不尽です。但し、すこし俯瞰して見ると、着うたの利益がIT事業者に吸い上げられずに、音楽業界内に留まったのは良かったとも言えます。この15年位の間で唯一と言ってもいいくらいのレコード業界の成功施策がレコチョクをつくったことだというのが私の持論です。時代に乗り遅れがちで、団結力も弱いレコード会社が、共同でプラットフォームをつくり、売上を業界外に出さなかった、レコ直の「成功例」は出版業界にも参考になるのではないでしょうか?

と言うことで、今日はここまで。
もう少し続きます。

2010年11月22日月曜日

電子書籍は音楽配信の夢を見るか(2)

前回の続きです。

●出版ビジネスはデジタルに"のびしろ"がある!?
まずは、この図表から。


デジタルコンテンツ財団がまとめたデジタルコンテンツ白書からの引用です。
コンテンツ全体では、音楽の3.7倍ある出版業界の売上が、デジタルだと98%しかないですね。
この白書における各ジャンルの定義がどうなっているのか、細かく吟味はできていないのですが、大まかに言って、出版業界はデジタル化に、売上増大の可能性があるということは言えるでは無いでしょうか?

●出版市場も右肩下がり!?


業界外の私が指摘するのも、お釈迦様に説法という感じで恥ずかしいのですが、
こんなことなんですね。

そこで、音楽業界と出版業界を1980年を100として比較する表をつくってみました。
●出版業界と音楽業界は相似形!?


全体的な傾向は同じだけれど、CD売上の落ち込みのほうが早く、激しいですね。2008年の時点で28年前の水準まで落ちてしまっています。

●多様な収入源がある音楽ビジネス
但し、業界の比較ということで言うと、この比較だけでは不十分です。
音楽ビジネスは、多様な収益源があるのです。
アーティストマネージメント(音楽事務所)の視点で見ると、収益源は、
・CD売上⇒原盤印税、アーティスト印税、プロモーション印税等
・配信売上⇒原盤印税、アーティスト印税、プロモーション印税等
・著作権(楽曲)印税⇒放送二次使用料、カラオケ使用料等々
・コンサート興行売上
・ファンクラブ(モバイルFC含む)
・マーチャンダイジング
・TV出演料、CM契約料
などがあり、アーティストのタイプや事務所のカラーにもよりますが、
一定以上の規模になると、CDや配信からの売上は、2~3割程度が多いのではないでしょうか?
個別の説明をしだすときりが無いので、割愛しますが、ご興味のある方は、ご質問いただければお答えします。
アーティストを核とした、音楽ビジネスには、多様な収益方法が確立されていることが、
出版業界と音楽業界の大きな違いであるということは言えると思います。

●コンサート売上、著作権使用料は堅調ないし微増している
参考までに、JASRAC使用料とコンサートに関する指標を上げておきます。


CD以外の売上は、まだ増加率は高くないですが、増え続けているのが現状です。これらにも多様な問題があり、安穏とできる状況ではないのですが、とりあえず、まだ落ち始めてはいないという事はおさえるべきポイントでしょう。

ちなみに、すこし余談になりますが、音楽業界の周辺にもビジネスがあります。古くはカラオケ産業、着メロ等のモバイル産業、楽器販売、音楽スタジオレンタル、CDレンタルなどがあげられます。音楽業界は、周辺にビジネスチャンスを生みながら、成長してきていると思います。着メロもカラオケも、音楽業界の出自とは無関係の会社が始めて、大きな利益をあげてきました。もしかしたら、音楽業界内でもっと新規事業を興していくべきだったのかもしれませんが、産業とは、そういうものなのかもしれませんね。

最後にカラオケ市場の図表をあげておきます。
参加人数が微減で、売上が激減しているので、デフレの象徴みたいだなと思いました。

今日はここまで。
まだ続きます。

2010年11月18日木曜日

電子書籍は音楽配信の夢を見るか(1)

先日、エミューの会という、出版業界のデジタル担当者の私的勉強会のスピーカーをやらせていただきました。その時、お話した内容が評判がよかったので、何回かに分けて、このblogで紹介しようと思います。

まず、最初に質問です。以下の文章にYes/Noで答えてください。

<Q1>日本は世界一のCD大国である?

どう思いますか?
こちらの表をご覧ください。

2009年に、日本はアメリカを抜いて、世界一のCD売上を持つ国になりました。日本もピークの半分以下に落ちているのですが、欧米の落ち込みはもっと壊滅的で、昨年、逆転しました。円高の影響も多少あるのですが、この傾向は今年も進んでいるので、しばらくの間、日本の首位の座は揺らがないようです。この事実を、「日本人はパッケージ好きだから」と好意的にとらえるか、「時代にどんどん遅れていっている」とネガティブに考えるかは、意見のわかれるところでしょうね。もうCD専門のチェーン店(タワーやTSUTAYA)は、大まかに言うと、日本にしかありません。

<Q2>日本ではiTUNES MUSIC STOREは失敗している?

これも意外に思う方が多いと思いますが、YESです。日本におけるiTMSのシェアは2%以下です。(PC配信の中では6割程度のシェア)この表は、2008年のデータですが、そんなに大きな変化は起きていません。

配信だけでも5%程度しかありません。アメリカでは2010年四半期でiTUNESのシェアが70%を超えたとの情報もありましたので、大きな違いです。日本の音楽配信は、9割弱が携帯電話によるものなのです。
ただ、iTMSが失敗していることは、アップル社の日本における敗北は意味しません。コンテンツを利用して、ハードを売って儲けるという、ビジネスモデルは、コンテンツプロデューサーにとっては、屈辱的と言うべきかなというのは、私の見解です。
iTMSが普及しない理由は、日本にしかないCDレンタルがあるのが大きな理由だと言われています。25年前に、日本にしかない「貸与権」という権利が法律で認められてしまったのですが、
レコードからCDに商材が変わったときに、手を打てなかったのは、音楽業界の大失敗でした。そのことが結果的にiTMSの存在を下げているとすると、何がよかったか悪かったかの判断は、なかなか微妙だなと、率直に思います。

前回のblogで佐々木俊尚さんの「電子書籍の衝撃」の音楽業界の引用が間違っているという指摘をさせていただきましたが、何となく正しいと思っていることでも、ちゃんと確認してみると間違っていることはあるものです。常識だと思っていることもちゃんと疑ってみましょうという問いかけでした。

次回から本題に入ります。