2017年5月5日金曜日

コンテンツ&エンタメビジネスを考えるための必読書紹介

 GWは真鶴町でコーライティングキャンプに参加しつつ、ニューミドルマン養成講座第6期の開講に向けて、資料をブラッシュアップしている。推薦図書をまとめて紹介するのはブログにもアップしようと思いついた。

 前回のブログでも書いたけれど、ニューミドルマンラボの目的は、
時代の変化に合った(できれば先取りした)、
次世代の音楽ビジネス(という領域自体を疑いつつ)を
再構築する方法を考え、実践していくこと。
 なので、そんな問題意識がある人にオススメしたい本だ。

 まずは、基本中の基本の拙著。日本で音楽ビジネスに関わる際に知っておくべきことを、2021年までの間に起きることの予見も含めて、総論的にまとめている。僕としては、「一旦、書き切った」という気持ちだ。大学や専門学校の教科書としても使われるようになっているそうで、とても嬉しい。重版が決まった。電子書籍でも読まれているらしい。まだ人は是非、読んでみて欲しい。


 実は、必ず読んで欲しい一冊だ。この10年間に起きている時代の変化を、ビジネスパーソン向けに、平易まとめている。扱う分野も、音楽、映像、放送、新聞、出版、自動車、IoT、UGMと章があり、幅広く横断的に捉え、デジタル化による大きな潮流の変化がわかるはずだ。僕が自動車やテレビについて語るようになるとは思わなかった。まさにそれが変化の証左なのだろう。



 音楽制作、レコーディングについて興味がある人は、一読しておいて欲しい。この本が後押して、日本でもコーライテイングが広まっていった。この延長線上に業界でのプロの音楽の作り方とシステムが変わる予兆がある。5年後に起きるだろうクリエイター主導の音楽制作について、この続編をそろそろ書きたいと思っている。

 起業を視野に入れている人にはオススメしたい。1980年代生まれの起業が10人のインタビュー集。3年前に書いた本だけれど、すでに何人かは「EXIT」し始めている。この10人に今の活躍ぶりを見ると、僕の審美眼やアクセラーレーターとしてのスキルがあることが証明できるなと、鼻が高い。

以上は、拙著。
ここからは、推薦書籍。
 いろんなところで紹介しているけれど、この本は傑作だ。ビルボード1位をとった「SUKIYAKI」誰もが知っている「上を向いて歩こう」の誕生からヒットの様子を丁寧にまとめたノンフィクション。戦後すぐの日本の芸能界の草創期の様子がよくわかる。著者は尊敬する業界の先輩だ。THE BOOM「島唄」やiTunesでUS一位になった由紀さおりさんのジャズアルバムなどをプロデュースされている。その後も、執筆活動を意欲的にやられているので楽しみにしている。



 関西電通時代にradikoを生み、今は関西大学教授の三浦さんは、時折、情報交換をさせ
ていただいている。以前ニューミドルマン講座の講師もお願いしたこともある。日本、韓国、アメリカの音楽業界事情を、ビジネス論と文化論を上手に交えながら分析している。
 業界側の人が音楽ビジネスについて書くと、浅薄になり、認識の間違いがあるケースが多いんだけど、この本は見事に的を射ている。


『儲けたいなら科学なんじゃないの?』 堀江貴文  (著), 成毛 眞  (著)
 この本は一読を薦めたい。Technologyが時代を先導している昨今、科学について俯瞰した視点と、常識を持つことは重要な事がよくわかる。僕も刺激を受けた本だ。
 著書が多い、ホリエモン本の中でも格段に意義のある本だと思う。
元マイクロソフト日本代表の成毛さんは、時代に即した見識を持っている。彼らの話を聞いて理解できるように、自分のアンテナをチューン・アップしておく必要がある。

『超整理法』などの実用的なベストセラーと、先駆的な経済学者の2つの顔を持つ筆者の両面が活かされた名著だと思う。カリフォルニアの150年前のゴールドラッシュと、近年のシリコンバレーの隆盛を重ね合わせている。読み物としても面白い。
 歴史が教えてくれる事象のエッセンスを学ぶための方法というのがわかるようになる。


 著作権の基本を学ぶ本として、一冊上げておきたい。筆者は知財の弁護士で、ポジションは中道左派的。リベラルだけれどバランスがとれた主張をする人だと思う。リットーミュージ行くから出ているロングセラーの『よくわかる音楽著作権ビジネス』シリーズは、音楽家側の立場に寄りすぎていて、権利ばかりで、義務、責任に関する目配りが無いので、薦めない。これを若い音楽家が真に受けると、勘違いして損をすると心配だ。

 オタキングこと岡田斗司夫さんは、著作権に関しては、極左的過激派だ。僕ら権利ベースのビジネスをする職業から見ると、明らかに「敵」だけれど、その論理には見るべきものがある。インターネットが主流になった時代の本質を付いている。この本を読んだ時に、『だからコンテンツにカネを払うのさ』という本を前期のニューミドルマンラボの講師をお願いした知財とスポーツの専門弁護士FieldRの山崎卓也さんと組んで書きたいと思って、内容を考えているのだけれど、まだ企画書がまとめられていない。クラウド上のアクセス権がビジネスのメインになり、複製権ベースの著作権が有効性を失っている時代の著作権の在り方については、しっかりまとめないといけないと思っている。

『ルポ風営法改正 踊れる国のつくりかた』神庭亮介
 朝日新聞記者による、クラブ摘発問題〜風営法改正に関するルポ。クラブカルチャー側の人々の立場に立って書かれているが、正確な記述でためになる。知己の名前がたくさんでてきているけれど、本当にみんな頑張ってくれて感謝だ。日本の音楽文化にとって大きな貢献をした皆さんだと思う。市民運動的に始まったものが実効性を持つことが少ない日本では、今回の風営法改正は偉業と言えると思う。
 ニューミドルマン講座第一期受講生の齋藤貴弘弁護士の活躍ぶりもよくわかる本。彼の存在はニューミドルマンラボの誇りだ。

次世代のエンタメ・音楽ビジネスを育てる講座の名前を「ニューミドルマン」にしたのは、田坂さんの著書&講演がきっかけだ。
 従来型のビジネススキーム、発想なら不要だけれど、音楽ユーザーとアーティストの間に仕事はあるということを、田坂さんは俯瞰した一般論として論破されていて、膝をたたきまくった記憶がある。感動して「俺ってニューミドルマンだったんだ」と思った時の衝撃が大きく、名乗らせてもらった。前述の『新時代ミュージックビジネス最終講義』では、対談もしていただいて、めちゃめちゃ嬉しかった。凄い方だった。後付だけれど、「ニューミドルマンラボ」を名乗るご許可もいただいた。田坂さんの本はどれも素晴らしいけれど、「社会は螺旋状に発展する」という視点は本当に卓見だと思う。是非、読んでみて欲しい。

 さて、以下は、今回のゲスト講師の著書。


『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)柴那典
 大ヒットになっているようだ。音楽界の現状を業界街の人や音楽ファンに伝えた功績は大きい。音楽編集者から音楽ライターという経歴で音楽が詳しく、大好きな柴さんが脚光を浴びるのは嬉しい。今回の講座では、受講生参加型の仕組みをやりたいと意欲的に考えてくれているようで楽しみだ。
 ヒットの意味や在り方が変わった今、音楽でビジネスをする際に、知っておくべきこと、示唆してくれるだろう。


 国際的に活躍するクリエイターであると同時に、実は優秀なビジネスパーソンという顔があるのを知っているので、今回の講座では「お金の稼ぎ方」について話してもらうつもりだ。貴重な機会になると思う。
 ちなみに、彼の、『DJ選曲術 何を考えながらDJは曲を選びそしてつないでいるのか? 』 という本は、音楽とは何か?という本質について考える機会になる名著だ。DJが曲を選ぶhow toの深さが凄い。


 きゃりーぱみゅぱみゅや中田ヤスタカが所属する音楽事務所「アソビシステム」社長の著書。外国人は入場無料のマルチカルチャーなイベント「もしもしにっぽん!」を主催するなど、クールジャパンカルチャーを牽引する旗手である中川悠介さんは、世界における日本人のポジションと今後の展望を語るべき言葉を持っている人だ。


 さて、5月11日から始めるニューミドルマン養成講座第5期「音楽を広める、稼ぐ、その先へ〜日本の音楽ビジネス生態系の再構築を目指して」。まだ申し込みが間に合います。
こちらからどうぞ。

第1回 2017年5月11日(木)山口哲一「新時代ミュージックビジネスを識るための地図」
第2回 2017年5月18日(木)沖野修也+山口哲一「沖野流音楽マネタイズ術」
第3回 2017年5月25日(木)柴那典+山口哲一「ヒットの崩壊の次にやってくること」
第4回 2017年6月1日(木)矢島由佳子+鳴田麻未+山口哲一 キャンプファイヤー「アーティストとクラウドファンドの最適解」
第5回 2017年6月8日(木)ジェイ・コウガミ+山口哲一「2017年音楽地図」
第6回 2017年6月29日(木)中川悠介+山口哲一「原宿から世界へKawaiiの先へ」
第7回 2017年7月6日(木)梶望+山口哲一「宇多田ヒカルPRの秘訣」
第8回 2017年7月13日(木)山口哲一「重要性を増すニューミドルマンの役割」

蛇足:
以前は、読書メモを残していた。最近電子書籍で読むことも増えて、Kindle内のメモで済ますようになってしまったけれど、過去の読書歴をまとめているので、興味のある人はここで僕の乱読がチェックできる。