今日は、まず、音楽業界のCDと配信の料率の話をしようと思います。
いわゆるレコード会社、メジャーレーベルで新人アーティストが契約する場合の条件はこんな感じです。
アーティスト印税が1%というのは、びっくりするような低さだと思います。ただ、実際は、これまではレコード会社がアーティスト育成費を払うなどの形で、無名でも、アルバイトをしないで音楽活動に専念できる環境を数年間用意するというのが一般的でした。アーティストは安易に「給料」という言い方をしますが、専属契約をすることの対価ですし、平たく言うと、売れるまでの間、音楽活動に専念させるための先行投資です。
楽曲の権利(著作家印税)は、業界慣習で確保されていますし、売れれば、アーティスト側とレコード会社の力関係が逆転していくのも一般的で、洗練された仕組みが出来上がっていました。一部の業界外の方が「搾取の構造」と言うことがありますが、的外れだと私は思います。ただ、CDが売れなくなっていく中で、レコード会社が"世知辛く"なっていて、「洗練された仕組み」が成りたくなっているのが昨今でもあります。
さて、音楽配信の料率の話です。レコード会社は、アーティストおよび事務所に対して、パッケージ契約の読み替えで、対応しようとしました。返品控除や、ジャケット控除という名目が契約書にあるので、論理的に破綻していたと思います。私達事務所の立場だと受け入れがたいものでした。法律論的に言うと、「送信可能化権」というパッケージで売る(複製権)とは別の概念も認められ、配信については、別のロジックで考えるのが正しいと思います。
音楽制作者連盟が提唱した、論理的かつ現実的な分配モデルは下記の通りです。配信事業社(CP)と取り分は、もう少し圧縮できる場合も多いと思いますが、、。
いずれにしても、電子書籍においては、紙の書籍の読み替えではない、別のロジックの組み立てが必要だと思います。
さて、本稿の1で、日本の音楽配信はモバイルが9割弱であるということをお話しましたが、そのモバイルの7割強をレコチョク(レコード会社直営着うたサイト)が占めていると言われています。データは発表されていないのですが、各社モバイル担当に聞いても7割は超えているとのことでした。レコチョクは、大手レコード会社が共同出資した会社です。他のCPから見ると、独禁法違反の疑いもあると思うのですが、何故か大丈夫でしたね。
また、音楽事務所社長の立場で言うと、アーティスト側に、パッケージの読み替えの印税を強要しておいて、着うたマーケットを独占しているのは理不尽です。但し、すこし俯瞰して見ると、着うたの利益がIT事業者に吸い上げられずに、音楽業界内に留まったのは良かったとも言えます。この15年位の間で唯一と言ってもいいくらいのレコード業界の成功施策がレコチョクをつくったことだというのが私の持論です。時代に乗り遅れがちで、団結力も弱いレコード会社が、共同でプラットフォームをつくり、売上を業界外に出さなかった、レコ直の「成功例」は出版業界にも参考になるのではないでしょうか?
と言うことで、今日はここまで。
もう少し続きます。
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