2011年4月10日日曜日

最近観た映画 ~「英国王のスピーチ」「ツーリスト」「アレクサンドリア」「トスタニカの贋作」「ブンミおじさんの森」

最近観た、映画の感想まとめ。

自分のメモとして書いたものをあっさり公開するのが、「スケスケ社会」のやり方なのかなと、いうことで、今後はブログに記録しておこうと思います。


『英国王のスピーチ』

今年のアカデミー賞作品賞受賞作。吃音を持つ国王の次男が、予想しなかった国王の座について、スピーチを話すようになるのに苦労するという話。オーストラリア人のトーキングトレイナーと英国王の心の交流が描かれています。

 映画の典型的な楽しみ方の一つは登場人物への感情移入して観ることだと思いますが、この映画の登場人物に感情移入をするのは、私には無理でした。もちろん悪い映画ではありません。

第二次世界大戦前のイギリスが美しく描かれているし、深い夫婦愛もあるので、アカデミー賞を取らなければ、もっと褒められていたかもしれませんね。良い映画で、そういう意味では批判が多いのは、大きな賞をとった「有名税」という感じでしょうか?

ちなみに、対抗馬と言われて、脚本賞、編集賞、音楽賞の三章を獲ったものの、作品賞を逃した『ソーシャル・ネットワーク』は去年の秋に試写会で観ました。ITmedia「誠ブログ」に感想を書いたので、興味のある方は、こちらをご覧下さい。
フェイスブックの創業者を描いた、面白い映画でした。でも、アカデミー賞審査員の平均年齢を考えれば、作品賞は無理だったんでしょうね。


『ツーリスト』

アンジョリーナ・ジョリーとジョニー・ディップの豪華共演。予告編が、言葉を選ばずに言うと「あまりにバカバカしくて素敵」と思い、観てみたくなりました。
その後、評論家や映画ライターなどのレビューは、どれも惨憺たる酷評であることを知って、ちょっと腰が引けましたが、勢いで観てしまい、とても満足しています。

私は、昔からいわゆる「単館系」の映画を好んで観る傾向があります。できた頃のシネマライズには、毎月通っていました。でも、子供の頃から007シリーズは大好きだったという過去もあります。
ジェームスボンドが、幾多の困難を乗り越えて事件を解決し、毎回必ずナイスバディーのオネーチャンと懇ろになるというオチは、男の憧れだし、究極の非日常を描いています。実際に起こりえない「夢」を見せるのが映画だとすれば、こんな映画もあって良いはず。アンジェリーナは(ちょっと痩せすぎな気もするけど)常にヒールで颯爽と歩いているし、ヴェネツィアの街も美しいです。

デート・ムービーとしても相手を選ばずに、最適だと思います。ということで、世論には逆らって、オススメ^^

『アレクサンドリア』


歴史大作。四世紀のエジプトが舞台。ちょうど、ローマ帝国がキリスト教化し始めた時代に、科学を信じて殉じたという実在の女性天文学者が主人公。

主演のレイチェル・ワイズは、史上初の女性天文学者を好演。美しいです。
大きな予算を無駄に使わずに、丁寧に描かれていて好感が持てます。奴隷との関係など、現代人の眼ではなく、当時の人たちの価値観で表現しているところも良いと思いました。

 物語は、古代の神々を信じる街の貴族たちが、”野蛮”なキリスト教徒達を押さえ込もうとして、逆に敗れ去るという話。知の象徴である大使館を、”無知な”キリスト教徒たちが焼き尽くします。

主人公の最期も含めて、徹底的にキリスト教徒が悪く描かれているこの映画が、なぜカトリックが強い筈のスペインでつくられ、欧米で普通に上映できているのかが不思議。監督が、特に「反キリスト教」という意図は無く、歴史を忠実に描いていることが伝わったのでしょうか?その辺の事情をご存知の方がいらっしゃったら教えてください。

塩野七生著『ローマ人の物語』の愛読者としては、納得できる四世紀の描き方でした。非常に大雑把な表現になりますが、私の好きなヨーロッパはローマ(とギリシャ)で作られたもので、悪いと思う部分はキリスト教教会の影響だというのが、私の西洋史観です。その観点でも、この映画は申し分ありませんでした。
難しい話ばかりになってしまいましたが、娯楽大作としても楽しめますよ。


『トスカーナの贋作』


とても好きな映画です。なんと形容すればよいのだろう。
イタリア・トスカーナ地方の小さな街が舞台です。宣伝文句としては、大人のラブストーリーみたいになるのかもしれないけれど、陳腐で似合わない気がします。
 こういう映画は、説明するよりも、「良かったよ。観てみたら?」というのが正しい態度な気がしてしまいますね。

蛇足的に付け加えると、トスカーナのアレッツオという街の景色が、とても美しいです。映画の楽しみの一つは、美しい風景と人を見ることですよね?前述の『ツーリスト』が一般的な観光ガイドだとすると、こちらは「地球の歩き方」にも載ってない街の駅に降り立ったような楽しみでしょうか?

もう一つ、私自身は、語学力不足で十分には味わえないのですが、英語とフランス語とイタリア語が会話の中でミックスされていて、音としても美しいし、作品に陰影を与えています。ヨーロッパ人ならば、ここも楽しみ所でしょう。なぜ、この言葉はフランス語で言い、このセンテンスはイタリア語なのか、計算されている脚本です。


『ブンミおじさんの森』


東南アジアを仕事のフィールドに入れている僕としては、タイ映画がカンヌ映画祭のパルムドール(最高賞)を受賞したと聞いて、観ないわけにはいきません。渋谷シネマライズに行ってきました。


 びっくりするくらい、地味な映画です。これに賞を出すとは、さすがカンヌと思いました。タイの田舎が美しく描かれたファンタジーなので、ヨーロッパのインテリが心地よく思うアジアなのでしょう。


 私はバンコクの猥雑な都市文化にタイらしさを強く感じるのですが、確かにこれもタイの魅力の一つですね。死んだ人が育った家に戻ってくるというモチーフは仏教的なので、日本人には飲み込みやすいでしょう。タイが好きの方は要チェックです。


 エンディング曲がタイ語の渋谷系みたいな感じだなと思って聴いていたら、Small Roomという、まさに「タイの渋谷系」を得意とするレーベルの「ペンギンギラ」というアーティストでした。前知識を持たずに行ったのですが、日本にもファンの多い漫画家ポンニミットさんのイラストともコラボしてるし、タイのサブカルチャーフィルムという側面もありますね。


 映画を観てから、検索していたら、アビチャッポン監督のトークショーに関するブログを見つけました。エンディング曲は「高いところから降りてきてください」という曲で、監督は自分には届かない憧憬の気持ちを表したかったとのことでした。




 そんな充実した映画ライフでした。

他には、DVDで『ゲバラ!』と『イングロリアス・バスターズ』を観ました。

『涼宮ハルヒの憂鬱』のシリーズもレンタルで観ています。
これは、自分の中で、「コンテンツの仕事をしている者として、見逃しているアニメを一通りチェックしよう運動」を実施中なので、その一環で借りたのですが、面白いです。そして、この面白さが理解できた自分にほっとしました。
変な言い方ですが、この「オタク的感性」(これだけ多数派になるとこういう言い方も不適切で、単に日本のある世代の感覚というべきでしょう)に共感できたのは、発見でしたし、エンターテインメントコンテンツのプロデューサーとして、自分が「現役感」が持てている気がして、嬉しかったです。シリーズ全部観ようと思います。

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