2012年1月1日日曜日

独断的音楽ビジネス予測 〜2012年は目覚ましい変化なし。大変革への準備の年〜

 新年、明けましておめでとうございます。昨年の震災で、日本中が喪中みたいな年だけど、そんな時だけに、新年を迎えた喜びを分かち合いたいと思います。

2011年は、個人的にも、日本にも、国際的にも大きな事件があった年なので、いろいろなことを考えさせられた。年末から経済分析などを読み、考えてきたので、2012年予測を記しておきたい。

マクロ的には世界経済が不安定だ。ユーロは崩壊寸前の危機。ヨーロッパ経済が破綻すれば、中国に波及し、米国、日本への影響が拡大していくという世界恐慌の悪夢。これは、さすがに酷すぎるので、各国の指導者達が何とか避けると信じるしか無い。「人類を何回も殺せるくらいの爆弾があっても、核戦争が起きなかった」的な希望的観測。
いずれにしても、相対的(消去法的?)に、日本の国債と円の価値は上がるので、日本政府の財政は維持され、円高は進んでいく。
今年は世界主要国(米国・ロシア・中国等々)で選挙☞指導者交代があるので、政策的な大きな変化は起きにくい。求心力をもったリーダーが2013年にどのような変革を起こすか、おそれまでは、去年までの傾向が継続して、傷には絆創膏を貼るという感じの対応になるというのが、一般的な予測だと思う。

そんな中で日本の音楽ビジネスについて考えてみた。
ざっくり言うと、今年は、大きな変化は起きないと予測する。近年続いている傾向は続くだろう。CD売上減少、着うたの減少、スマフォ&PC配信の微増などは、環境的に変わりようが無い。ただ、ぞれぞれ緩やかな変化で、根本的な構造変化は今年は起きないと思う。
日本も早く変わるべきだと思っている僕にとっては、不本意な予測だけれど、、。

CD売上は、前年比一割以内の減少に留まる
2011年の統計はまだ出てないけれど、震災があったのに5%程度の減に留まりそう。「ほとんどAKB48でしょ?」「同じ人が何枚も買っているんでしょ?」という声が聞こえそうだけど、本質的じゃ無くても、理由はともあれ売上が維持されれば、ビジネススキームは温存されるという道理。

モバイル配信の変化もゆっくり進む
スマートフォンへの買い換えは進んでいくだろうから、「着うた」「着うたフル」は急激に落ちていく。ただ、去年下半期を傾向を見ていると、スマフォになっても、レコチョクやMORAで音楽を買うという習慣はある程度、残りそう。350円〜400円だった着うたフルに対して、スマフォだと1曲200円になるから、売上減は避けられないだろうけれど、DL数はそれほど落ちない気がする。

ストリーミングサービスは本格始動しない
音楽関連の画期的なITサービスの進出は望み薄だ。
レコードビジネスは、クラウド型ストリーミング(聞き放題)サービスがメインになり、CDはアーティストとの関係性を示す記念品として残り、ダウンロードサービスは衰退する、というのが僕の基本的な認識だ。実際、ヨーロッパでは始まっている。音楽ファイルになってしまった音楽は、違法配信サイトやピアトゥーピアサービスを撲滅することが原理的に不可能な以上、ユーザーに快適な音楽再生環境を提供して、音楽制作費を回収する仕組みを確立するしか無い。
でも、残念ながら、今年は日本ではまだ始まらないだろう。
アップル社も、ダウンロード型のiTunesStoreが世界(日本を除く)のデファクトになったためか聞き放題型に切り替えることができずにいる。本命もと言うべき、Spotifyは、米国でのサービスを始めたばかりで、日本上陸は、今年は無理そうだ。
権利ホルダーの中心であるレコード会社が日本の通信会社と組んで始めるべきだと思うけれど、前述の通り、前年比9割程度が維持されれば、守りに入って、攻めに出ることは難しいだろうね(auはLISMOで聞き放題サービスを始めているけれど、聴けるのはほとんど洋楽)
ベンチャーもIT大手も含めて、主役となれる可能性のある事業者が全く見えない。今年は間に合わないと思う。

●つまり、音楽ユーザーの消費行動はまだ大きく動かないということ
ちなみに2011年のCDレンタルの売上は前年比97%程度と言われている。震災のマイナス分を考えると、むしろ微増と言えるかも知れない。TSUTAYAがポスト返却など利便性を高めたり、ゲオが映画DVDの50円レンタル(市場を壊す行為なので大至急やめさせるべきと思うけど)で集客したりして、レンタル市場は維持されている。ユーザーは、CDを借りて聴く、PCにリッピングしてiPodで聴くという消費行動は、定着していてすぐには変わりそうもない。
新しい事をすぐ試してみるいわゆるイノベーター層はともかく、音楽ユーザーのマジョリティ(多数派)は、自分でイメージできて、安心できるサービスしか取り入れない。

日本が足踏みしている間に、欧米ではサービスが進化する。焦る気持ちもあるけれど、視点を変えれば、欧米のサービス状況を吟味して、日本流サービスを考える時間があるとも言える。この時間差を無駄にしないで、しっかり準備したい。
日本市場は、定着し始めると早いという特徴もある。2013年か14年か、一気に、ストリーミングサービスが広がる可能性は高いと僕は思っている。

そんな2012年は、音楽ビジネスは「準備の年」になる。ポイントは3つ。
1)経済的中間層が激増するアジアを中心とした海外輸出の環境整備
2)ソーシャルメディアを活用したプロモーションおよびマネタイズの研究
3)異業種との組み合わせ、企業とユーザーのリレーションに貢献する仕組みの確立

自分自身、昨年からキャッチフレーズにしている、グローバルな視点ソーシャルメディア活用異業種コラボをテーマに、準備を進めておきたいと思う。

付け加えると、ライブエンターテインメントは引き続き堅調、ファンクラブ、グッズなどを加えたアーティストビジネスは、ビックアーティストを中心に微増していくという流れは暫く変わらないだろうね。

年間予測は、高名な評論家も外してばかりだ。僕の予測は、当たるも八卦、当たらぬも八卦、正月のおみくじみたいなものと笑って赦して欲しい。
今年の年末にこのブログを読み返して、自分がどんな感想を持つのか、そんな事を楽しみに、一年間頑張ろう。

<関連投稿>
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2011年11月7日月曜日

最近観た映画〜『tree of life』『猿の惑星 創世記』『ガザを飛ぶブタ』『素敵な金縛り』


最近と言いつつ、ずいぶん幅があるけど、4本。
映画は、観たらすぐ、書かないと、タイミングを逃すよね。と、反省しつつ。

『ツリー・オブ・ライフ』
ツイッターでも話題になっていた映画。意見を聞かれて「よい映画だと思うし、嫌いじゃないけど、他人には薦めづらいな」とツイートした。
父と子供の葛藤に、恐竜の親子を重ねてるのもわかりやすくないし、キリスト教的な感覚も前提になっている気がするし、全体的に重苦しさはあるし、結構長いし(138分)というのが、薦めにくい理由。
同時に、良い映画だなと思うのは、監督がしっかりとしたイメージを持っていて、それが実現できている気がするから。
2時間以上の時間をテレンス・マリック監督に「支配」されてしまった。この「支配」は、重苦しいんだけど、心地よさがある。グレン・グールドやセロニアス・モンクのピアノソロを聴いたときに感じる「支配感」と似ているなと思った。

『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』

宇宙で漂流してたどり着いた、猿が支配する惑星が、実は未来の地球だった。というのは、今更ネタバレと言う必要もないだろうけど、何故、地球がそうなったかというのが、今回の「創世記」バージョン。
よくできた構成とシナリオ、そして、今更だけど、本当にリアルなCGの技術で、すごくリアル。人間社会の弱さも描かれていて、様々なことを考えさせられる。
主人公は、愛情と正義感が溢れる人物として描かれているけど、結局、この人が、個人プレーで、勝手に研究したことで、人類を滅亡させたんだよね。
エンタメとしてレベル高いです。

『ガザを飛ぶブダ』
 素晴らしい!
イスラエルが長期にわたって「占領している」パレスチナのガザ地区が舞台。主人公はパレスチナ人の男と占領地にいるロシア系ユダヤ人女性。そして、突然現れたブタ。イスラム教徒であるパレスチナ人にとってブタは不浄だし、ユダヤ教徒にとっても、忌避すべき存在。
フランス人的なエスプリに溢れてるけど、独りよがりてはない。 難しい社会状況を笑いに変えながらリアルに描いている。
宗教的対立も相対的に、そして愛情ある目で捉えて、くすっと笑える。久々に良い映画を観た気分。
東京映画祭(TIFF)で観客賞をとった。まだ配給決まってないみたいだけど、是非、上映して欲しい。もう一度観たい。

『素敵な金縛り』
絶賛上映中、大人気の映画。 
演技力の高い役者が多数出演。深津絵里と西田敏行、阿部寛と中井貴一と巧い人がたくさんという印象。浅野忠信もすごくよかった。
エキストラに近い端役が超豪華なのも、三谷作品の特徴だよね。ぜいたくーって思いながら、なんか楽しい。
物語の展開もテンポ感良く、笑いながら楽しめる。幽霊がいなくなってからラストまでは、ちょっとくどかったけど、そこにも味わいはあるしね。
フジテレビ×東宝という日本の大メジャーは、何となく敬遠しがちだけど、今回は、映画館で観て良かったな。

『モテキ』も観たいんだけど、タイミングを逃しているな。

 それから、DVDで観た『LOVE ACTUALLY』は、凄く良かった。
60年代の海賊ラジオ局を描いた『パイレーツオブロック』のリチャード・カーティス監督の代表作というので観てみたんだけど、群衆劇として最高のシナリオ。いくつものラブストリーが折り重なっていくシナリオが素晴らしいし、気持ちの良いハッピーエンド。デートムービーとしても鉄板。



2011年10月20日木曜日

日本のライブハウス事情2011、音楽シーンの底辺を支えるライブハウスシーンのビジネス構造


  ライブハウスにきちっとした定義がある訳ではないし、組合組織も無いので、きちんとした統計はわからないけれど、日本全国では1000軒以上のライブハウスがあると言われている。簡易的にライブができるカフェやバーを加えると数え切れないほどのお店があり、日本の音楽シーンの底辺を支えていると思う。

 海外のライブハウスでツアーをやった経験から比較しても、日本のライブハウスの設備は非常に充実している。過剰かもしれないとも思うけれど、PAのコンディションを心配する必要が無いのは助かるし、出演者も演奏しやすいだろう。100人程度のキャパのライブハウスでモニターシステム(演奏者が自分たちの演奏を聴くための仕組み)が4〜5系統あるなんて、欧米ではまず無いと思う。海外で何百のライブを観たわけでは無いけれど、僕の経験上、小規模ライブハウスのPAオペレーターの技術は日本が一番高い気がする。
 アメリカは飲食業で基本の経営を成り立たせて、バンド演奏はプラスアルファという業態の店も多いから、単純に比較できない部分もあるけれど。
 日本でもライブハウスの業態はいろいろで、例えば4ビートのジャズをやるお店は、飲食をベースにしていて、ライブについては店側が、リスクを持って、ミュージシャンにギャラを保証している場合が多い。

 また、地方のライブハウスには、バンドを育てて、音楽業界に情報を伝えるという役割も担っている。日本では、例えば、小さな街のライブハウスで数百人を集めて人気のバンドが出てきたら、業界関係者に伝わり、数ヶ月以内には、レコード会社のディレクターや事務所のマネージャーが観に行くという緩やかな仕組みができあがっている。今となってはメジャーデビューが素晴らしいことかどうかは別にして、そこで大衆性があると思われれば、全国規模のデビューに繋がっていく。そんなシステムがあるのは、おそらく日本だけなんじゃないかな?米国のライブシーンよりビジネススキームとして洗練されていると思う。

 最近、ツイッター等でライブハウスのノルマ制が俎上にあげられていたようだ。僕もアマチュアバンドにチケット買取の義務を負わせるのが当然と思うライブハウスのブッキングマネージャーは職務怠慢と思うし、立体駐車場と同じビジネスモデルに安住した経営者もライブハウスとか言うなよとは以前から思っている。そんな人達が音楽論を語るのは、ファーストフードの経営者が食文化の歴史を語るような気持悪さがある。

 ただ、僕が「ノルマ制度」を批判していたら、親しい友人で、有名パンクバンドをスターダムに押し上げた某マネージャーは「ノルマ制が広まって、ライブハウスが民主化した側面もある」と言っていた。「ライブハウスのオヤジが気に入らなくても、誰でも出られるようになって良かったんだよ」と聞いて、物事には何でも功罪両面あるんだなと思った。
 また、78年前に名古屋の名物ライブハウスオーナーと話していて、「最近のバンドの子はノルマにしないとチケット売らないんだよね。」と悲しそうに言っていたのも思い出される。その店は最後までノルマ制を取り入れなかったけれど、周辺のお店に泣きつかれて、導入することにしたのだそうだ。

 ちなみに、僕がライブハウスのマネージャーにブッキングを直接頼むことは、ごく希にしかないけれど、そのアーティストを気に入って貰えるかどうかがポイントで、チケットのノルマを強いられた経験は、ほとんどない。出演する以上、集客を頑張るのは当然だけれど。
 ただ、そういう気骨のあるお店が少ないのも事実で、300以上あると言われる東京のライブハウスで1割程度だとは思う。ほとんどのお店は、アマチュアバンドにチケットノルマを課すのを当然と考えている。

 一番よくないと僕が思うのは、ライブハウスもバンド側も、深く考えずに「そんなものだ」と受け入れてしまっていることだ。もう10年位前だけど、興味を持ったアマチュアバンドの子が「渋谷の**は2万円、新宿の**は3万円」とノルマ数×チケット代金の金額で語っているのを聞いて、呆れて叱った記憶がある。
 「効率的と思って広まった仕組みが、誰も疑わなくなって、替えられない様な気分になって、矛盾を抱えたまま存在している。」って他の分野でもよくあることだよね?感覚が麻痺していることに一番の問題を感じる。
 いわゆるバンドが出演するライブハウスでは、集客の責任は、主にバンド側にあるというのが、今の日本の音楽シーンの慣習。お店側は、環境を提供し、宣伝をサポートしていく。店ごとのカラーを(多少なりとも)打ち出して、ライブハウスに行くのが好きなお客さんに、情報を出していく。そんな役割分担が行われている。
 日本を代表するようなスーパーバンドも、ほとんどライブハウスを通過して世の中に出ていっている。ライブハウスのスタッフからは、敏腕マネージャーやヒットディレクターも輩出している。貴重な人材供給源としても機能も見逃せない。
 音楽シーンや音楽業界でのライブハウスの意義は、多面的に捉えて欲しいと思う。

 いずれにしても、企業努力を怠って、アマチュアバンドにチケットノルマを押しつけているだけのお店は、やがて行き詰まる。音楽シーンの礎を支える個性的なお店が増えていくことを期待したい。

2011年9月27日火曜日

コンテンツとしての大相撲の価値 〜JUDOと相撲の二方向で国力向上に活用しよう〜

 一昨日、大相撲9月場所が千秋楽を終えた。
 白鵬の二場所ぶりの優勝という結末。日馬富士の横綱挑戦と鶴竜の大関挑戦は失敗だったが、琴奨菊は千秋楽まで優勝を争い、大関の座を手に入れた。同じく準優勝の稀勢の里は来場所、大関獲りに挑むことになり、久々に有望な日本人力士がでてきている。全日を観ることはできなかったけれど、全体的に相撲内容も充実してて嬉しかった。空席が目立ったと言われているが、今場所のような状況が続けば、相撲人気は戻ってくると思う。

 魁皇が昨年引退したことで、1横綱大関は全員外国出身の力士になっている。貴乃花が引退した頃から、相撲の番付の上位4〜5人には日本人が入っていない状態が続いている。最後の日本人力士の優勝は2006年1月の栃東だから、もう5年以上経つ。
 
 ちなみに、僕は小学校低学年の頃からの相撲ファンだ。父や祖母の影響でテレビ観戦してた。先代貴乃花(今の貴乃花親方のお父さん)と輪島が大関に上がる前の取り組みを覚えているんだけど、今、調べたら1972年だった。(うーむ。昭和は遠くなりにけり。)
 そんな僕は、相撲については、基本的に伝統擁護派だ。大抵は進取改革派な考え方を持っているつもりだけれど、相撲は別だ。古墳時代まで遡るとも言われている歴史のある相撲が積み上げてきた伝統をしっかり守るべきだと思っている。
 但し、今の幕の内力士に外国人が溢れる状態は悪いとは思わない。朝青龍は親方の教育が悪くて、後味の悪い残念な引退をしてしまったけれど、白鵬や日馬富士など、今の外国人力士は、大相撲の伝統をきちんと継承しているように見える。下手な日本人力士より、そんきょの姿勢も取り口も美しい。

 そして、テニスの全英オープンの優勝者に英国人がなれない状態が続いた事に喩えれば「ウィンブルドン化」とも言うべき今の大相撲の状況は、コンテンツ力という視点で捉えても、非常に価値があると思う。文化輸出をするときに、多くの国から関取(プロの力士)が出ていることは、理解の窓口として有益だ。
 外国人が相撲のしきたりを会得してくれていることは、日本の文化が必ずしも閉鎖的ではなく、普遍的な価値を持ち得るということの証明でもあると思う。
 サムライや忍者などのキャラクターは、アニメやコミックを通じて多く輸出されているので、日本のイメージを鮮烈に訴えることもできるはずだ。

 もう一つの日本古来の武道である柔道は、全く違う道を歩んでいる。五輪で日本人がメダルを取れないことも多いのは、気分としては残念だけど、それだけ国際化しているという証明でもある。カラー柔道着やポイント制度など、「本来の」柔道からは逸脱した形で柔道は、JUDOとして、世界的な競技になっている。
 日本オリジナルのフォーマットが、海外とすり合わせて、変化しながら発展している例と言えるのでは無いか?
 僕はどちらも素晴らしいと思うし、海外で、日本文化を理解してもらうのに、役立ってくれていると思う。

 また、コンテンツのプロデューサーとしても「相撲型」と「JUDO型」の二つの成功例を意識することは、国際化の方法論として有効だと思う。

 さらに加えるなら、はじめから欧州発のグローバルルールに適用しようとする「サッカー型」がある。女子サッカーのなでしこJAPANは世界一という結果出したね。
 米国発祥のスポーツを、日本式にカスタマイズして、「baseball」を、緻密で求道的な「野球道」に仕立て上げた「野球型」もある。炎天下の甲子園で行われる高校野球は功罪あるけれど、日本人に広く野球を浸透させているし、WBCを2連覇して世界一にもなっている。「野球型」も参考になるよね。勇気が持てるといういうべきかも。

 グローバル化の洗礼は、もはや、日本のすべての産業が避けて通れない。
スポーツの4つの類型は、コンテンツだけでじゃなく、企業経営でも参考になるよね。
 白鵬の優勝インタビューを聞きながらそんなことを思った。


 相撲については、こちらもご覧下さい。

  大相撲はスポーツじゃない。文化的な伝統を守るために協会の仕組みを改善すべし。~大相撲八百長疑惑の考え方~



2011年9月11日日曜日

2011.9.11に思うこと。〜米国同時多発テロから10年。東日本大震災から半年〜


2001911日は、ニューヨークのマンハッタンに居た。2週間ほど滞在する予定の折り返し点で、塩谷達也という所属アーティストが、ニュージャージーのゴスペル教会でのレコーディングを終えて、僕の部屋に泊まりに来ていた。

当時は、ニューヨークに行くと、アッパーウエストの短期リースマンションを定宿にしていた。その部屋で、「テレビを観てください」と、たたき起こされた。寝起きの悪い僕が、「ナニコレ?何の映画?」と言ったのを覚えている。「違いますよ!CNNですよ!」と言われて、目が覚めた。日本でも何度も流れたであろう映像は、米国でも繰り返し放送されていた。最初はダイナマイトの爆発かと思ったが、4回目くらいに、飛行機がWTCのビルに突っ込んでいるのが見てとれて、これはただ事じゃないなと気がついた。その頃には日本からもたくさんの電話が掛かってきて、「ともかく食事と水だけは確保した方がよい」と言われて、近所のデリに買い物に行った。

僕が泊まっていたアッパーウエスト80丁目とワールド・トレード・センター(WTC)は、東京で言えば、東京駅と三軒茶屋位の距離はあると思う。煙も見えないし、匂いも届かない。部屋に居ても、騒動はわからなかった。塩谷も目が覚めて、メールチェックして、日本からのメールで知り、テレビをつけたそうだ。パンとワインとハムとチーズなどを買い込んで「ホームパーティやるんじゃないですよ」と揶揄されながら部屋に戻ると、窓からは帰宅する人々の姿が見えた。地下鉄が止まり、歩くしかなかったのだ。

半年前、2011311日の渋谷の街の光景を見て、あの時のニューヨークを思い出した。ニューヨーカーも冷静だったけれど、あの時の東京人たちも秩序のある行動だったと思う。

20代半ばから、何度となく訪れたニューヨークは、僕にとって心の故郷とも言えるような大好きで大切な都市だ。WTCというビル自体には、特別な思い入れは無いけれど、ニューヨーカーの人たちが悲嘆に暮れている姿を見るのは辛かった。友人の家族が死んだ時のような気持。バーは営業していたので、毎晩遅くまで、深酒してしまった。

3日ほどたって、いくつかのミュージカルが再開した。仕事もできず、飛行機の運航状況をチェックする以外にやることが無い僕は、オフブロードウエイに足を運んだ。ミュージカルの内容は覚えていないけれど、カーテンコールで、出演者全員が舞台に上がって、肩を組んで「God bless America」を歌ったのは印象的だった。

変な言い方かもしれないけれど、ニューヨークに居るときは、アメリカ合衆国を意識することが少ない。移民が多いこともあるし、ニューヨークという街の魅力と吸引力が大きいからだろう。ところが、9.11後は、アメリカを意識させられて、疎外感も味わった。愛国心が高揚した時のアメリカ人の姿には、何故か違和感を覚えてしまう。

あの日を境に、アメリカも変わった。9.11のショックとブッシュJrの無能ぶり
が、無ければ、黒人大統領を選ぶというラディカルな選択はできなかったのでは無いだろうか?その極端さがアメリカの魅力と強みでもあるのだけれど。
おそらくブッシュは、1000年後に人類史4000年を振り返っても五本の指に入る愚帝だろう。ゴアを全面的に支持するわけでは無いけれど、あの超僅差だった大統領選でゴアが勝っていれば、9.11テロも未然に防げたらしいという情報を知ると、歴史の不思議と残酷さを感じる。

そんな風に考えていると、千年に一度の大災害の時の首相が、「市民派」の菅さんだったのは、日本人の不幸だと思うし、同時に、僕たちは、これからの日本をよい方向に変えていけるのかと考えさせられる。原発の賛否の話ばかりになっているけど、太平洋戦争後、高度成長を経て、まあまあ良い感じだった日本という国が、このまま落ちぶれてしまうのか、魅力のある国でいるのか、原発云々よりももっと大きな境目にいる気がしてならない。10年後、20年後に振り返った時に、この未曾有の大災害が、結果的に日本をよくする契機になったと思えるようにしたいと心から願う。

10年前の9月のニューヨークの空気も沈痛が覆っていた。不屈の精神を持っているように感じた。あの時のことは、一生忘れないと思っていたけど、所詮は、人ごとだったんだと、今回の震災を経験してわかった。

3.119.11、どんな記念日よりも重い、イレブンスを半年ごとに迎えることになるんだな。
そんな事を思っていたら、大阪在住のシンガーソングライター・ササキホナミが、こんな曲をYou Tubeにアップしてた。
原発事故で将来を悲観して自殺してしまった93歳の女性の事を歌った歌。こんな悲劇を産んだことを忘れてはいけないね。歌はとてもよいと思うので、聴いてみてください。





2011年9月8日木曜日

多国籍バンドThe_AIU登場!アジアコラボの最新型!!




The_AIU(エーアイユー)紹介!


公式プロフィール☞
東京を拠点とする多国籍でドラムレスの3ピースバンド。というエレクトロの要素が入ったロックバンド。
ジャカルタの大規模なロックフェスへの出演、ロック映画の主役をつとめるなどインドネシアで熱狂的な人気を誇る女性シンガー、アユ・ラトゥナ(Vo)と、「サマーソニック」「ジャパンフェス」などに出演した元THE JETZEJOHNSONのギタリスト壮一(Gt&Cho)と、ノイズ&トリートメント担当の国籍不明の謎の美少年ジェシー(Noise&Treatment)がメンバー。日本語〜英語〜インドネシア語の三カ国語を操り、2011年に相応しいカオティックなロック・サウンドを日本発〜世界標準でかき鳴らす!!




インドネシアの人気ロックバンドのボーカリストが、子供の頃から日本の漫画やアニメや音楽が好きで、東京に来て、出会った日本人と一緒にバンドを始めるというのが、とても今日的な出来事だと思う。
 元ジェッジの壮一と謎の美少年ジェシーという3人組の組み合わせも意外性あり

iTunesの「今週のシングル」に選ばれました。無料DL中!


無料DLをして、気に入ったら、アルバム「MINORITY」を聴いてみて

リリース日はJ-popアルバムチャート9位!


リード曲「CPU」のミュージッククリップ


オフィシャルサイトはこちら。
http://www.theaiuband.com/
 CDは、9/21リリース



このバンドの面白さ、今日的な価値と登場の必然、そしてアユとの出会いなどは、また改めて書くつもり。まずは紹介まで。

2011年9月1日木曜日

デジタルコンテンツ白書2011に寄稿しました!〜音楽業界の現状と近未来〜

本日、9月1日に刊行された「デジタルコンテンツ白書2011」の音楽部分を執筆しました。
 A4サイズで12ページ(約15000字)と、結構な分量です。役所の出す白書は値段が高くて(12000円)「買って下さい!」とは、言いにくいのですが、会社の資料費で余裕があれば、お願いします。大きな書店や図書館には置かれるでしょうから、機会があったら読んでみて下さい。概要はこちら。

ちなみに、要約すると、
 CD売上げの減少は止まらないが、世界的な潮流と比べれば緩やかである。好調に売上げを伸ばしてきた携帯向け音楽配信が下降に転じ、新たなビジネススキームの構築が必要になっている。
 一方、ライブエンタテインメントの着実な伸びや海外でのJポップ人気、「同人音楽」の台頭など、希望を持てる現象もある。産業構造やメディアの役割が変わる、新しい時代環境に適した音楽業界のあり方が問われているのではないか?

 となっています。

 目次と小見出しを紹介しますね。

 ●粘り強い日本のCDビジネス
  ☞日本は世界一のCD大国で、海外と比較すれば落ち方は緩やか


 ●たこ壷化したCDシングル市場とオリコンチャートの形骸化
  ☞何故2010年のオリコンシングルチャートは、嵐とAKB48だったのか?

 ●飽和して下降を始めた携帯向け音楽配信
  ☞スマートフォンが主流になって、着うたビジネスは終了する

 ●iPodは売れても、iTunesからのダウンロードは広まらないパソコン向け音楽配信
  ☞日本ではパソコン向け音楽配信は根付いていない。その理由は?

 ●構造衰退業種となったレコード会社はどこに行くのか? 
  ☞レコード会社が担ってきた役割と今後の課題。

 ●成熟するライブエンタテインメントビジネス
  ☞ロックフェスティバルの隆盛とライブシーンの成熟

 ●堅調な推移の著作権使用料
  ☞著作権使用料は堅調。より透明で公正な徴収分配が重要

 ●「放送と通信の融合」遅延の音楽業界への悪影響
  ☞放送局が旧いビジネスモデルに固執したことは音楽業界にもマイナスだった

 ●全世界的に拡がるJポップの浸透 
  ☞アニメ、ゲーム、コミックを契機に、世界中で愛されているJ-pop

 ●「同人音楽」と「ニコニコ動画」の隆盛
  ☞メジャーorインディーズでは無い、新しい音楽シーンの成立とビジネスの可能性

<音楽ビジネス3つの課題>
1)新しいマネタイズシステムの確立⇒クラウド型ストリーミングサービスの可能性。
2)マスメディアに依存しないPRシステム⇒ソーシャルメディアの積極的な活用
3)海外輸出および観光資源としての音楽ビジネス⇒「オールジャパン体制」の必要性と 各論の開始

<震災の影響>
   ・震災で音楽の価値は再確認され、直接的なダメージは大きくない。但し、原発事故の情報公開不徹底によるダメージは非常に大きい。



こんな感じです。
かなり盛りだくさんの内容なので、項目ごとに、別途書き起こそうと思っています。
質問などあれば、歓迎します!