前回のブログで日本でも音楽ストリーミングサービスが本格的に到来したこと、日本ではパッケージ市場へのマイナスは少なく、プラス効果のほうが大きいのではないか?と提起した。BLOGOSに転載されたからというのもあるだろうけれど、予想以上にネガティブな反応を見かけた。
「自分にはストリーミングサービスとか必要ない、使う気はしない。だから、そんなに流行るとは思えない」という意見。
あとは「もうオワコンになっている音楽業界が元気になるなんて思えない。レコード会社ってもう終わっているでしょ?」みたいな意見。
全体を俯瞰した判断ではなく、情緒的な印象論、感情論が多かったように感じた。
ユーザーは理屈通りに動くわけじゃないし、長年の消費行動は習慣性を持っているから、新しいサービスは簡単に受け入れられないことも多い。「コンテンツがクラウド化した時代は、ストリーミングで聞くのが当然だ」という「理屈」は「ユーザーの気分」の前には無力だ。
ただ、スマホが情報の窓口になっている時代に、音楽ストリーミングサービスは浸透する必然性がある。ユーザー行動は保守的であると同時に「便利さには負ける」という側面もあるので、知らず知らずのうちに使ってしまうというパターンもある。
僕は、5年位前からストリーミングサービスをウォッチングしてきて、人々の生活の中で音楽を親しくする役割を果たしてくれると確信している。パッケージ市場とCDショップが生き残っている日本では、音楽シーン活性化の効果は大きいはずだ。パッケージにも好影響が出るはずだ
「希望的観測でしょ?」と言われれば、その通りかもしれないけれど、僕なりには根拠も実感もある推測なので、支持してくれる人を増やすために海外のデータを出そうと思う。
ITの世界で言うグローバルであるアメリカの事例が中心になるのは仕方ないけれど、音楽市場に関して言うと、アメリカにはアメリカの特殊性がある。
自由経済を標榜して、何事にも極端に振れがちなアメリカは、ウォールマートが集客ツールに使うために、CDを低価格で売るようになって、タワーレコードが倒産した。入れ替わるようにiTunes Storeが音楽流通の主役になり、ダウンロードして自分のパソコンやiPodで音楽を聞くという習慣が広まった。それが近年は、Spotifyに取って代わられるようとしている。Spotifyは、先週有料会員が全世界で2000万人を超えたと発表された。国別の細かなデータは公表されていないけれど、アメリカでの伸びが顕著だと聞いている。伸長するSpotify対抗策として、アップルが始めるのが、今回WWDCで発表されたApple Musicなのだけれど、CD⇒DL型配信⇒ストリーミングと主役が大きく入れ替わっているアメリカ事情は、日本との比較対象には適してない。
そこで、世界第三位の音楽市場を持つドイツのデータを引用したい。
ドイツの音楽配信売上 |
まだCD市場も残っているドイツの例の方が参考になるよね?ドイツは、2014年に業界全体が1.9%成長と回復基調が明確になった。ストリーミングが対前年46%増とデジタル全体を12.2%成長させて、業界の成長に貢献した。同時に、フィジカルも堅調で対前年マイナス1.5%にとどまっている。
ユニバーサルドイツの副社長Holger Christophは「すくなくともドイツではフィジカルセールスとストリーミングは共存できている」と表明しているそうだ。
ユニバーサルドイツの副社長Holger Christophは「すくなくともドイツではフィジカルセールスとストリーミングは共存できている」と表明しているそうだ。
CDやダウンロードの所有型ユーザーは平均46歳と大人層で、ストリーミングはそれより若い層を取り込んでいるというのも、日本にとって参考になるんじゃないかな。
それぞれの立場や気分で、いろんな意見があってよいので、個別にコメントはしないけれど、もう一度だけ言うと、ストリーミングサービスというのは、音楽体験として、必然的な変化だ。スマホどころか携帯電話を持たないことも自由なので、いろんな人生、価値観があって良いと思うし、その人が生きている間、そのポリシーを貫くことは可能だと思う。ただ、社会の変化としては、クラウド上に楽曲を置いて、友人知人とプレイリストなどでコミュニケーションして音楽を楽しむというのは、移動手段が馬から自動車になったような時代の変化だということは、知ったほうが良いと思う。今でも乗馬クラブはあるし、僕は自動車免許を持っていないし、生き方はそれぞれ自由だけれど、高速道路や新幹線が産業活動における幹線になっているような意味で、音楽体験の主役の一つがストリーミングになることは時代の必然だ。これを否定する人を論破するための時間は、申し訳ないけれど僕にはない。車が嫌いだからロバに乗って移動する人の人生も個人的には嫌いじゃないしね。
むしろ、伝えたいのは、日本にも欧米に比べて4年遅れで始まった、音楽ストリーミング時代がチャンスになり得るということだ。「次のことやろうぜ!」というのが、僕が一番、言いたいことだ。
ITサービスをやっている人は、音楽体験の変化に基づく新しいサービスを考えて欲しい。プレイリストにロボットアバターを模すという素敵なアイデアを提唱したビートロボは、優秀なCTOが特許をとって、PLUGAIRというスマホ向けのガジェット&サービスを始めている。もう音楽の範疇を超えて、スマホ経由のID認証や決済の分野でポジションを作りつつあるけれど、SXSWがもともと音楽祭だったような意味で、音楽サービスをDNAに持っているベンチャーだ。
アーティスト側からみると、ストリーミングサービスは新たなビジネスとPRのチャンスだ。僕は5年位前から「ストリーミングサービスが主流になるけど、その売上はレーベルがガメて、俺達には入ってこないから、そこに付随して儲かる商売を考えようぜ。これまでCDの購入特典にしていたような、写真とかをデジコンにしていけば良いんじゃない?」って後輩マネージャーたちに訴えてきた。
日本の音楽市場にストリーミングが浸透することで、やっとJポップで海外で勝負する可能性が生まれる。ラッキーな事に日本政府もそこに興味は持っている。僕が、徒手空拳に有志で立ち上げたエンタメ系スタートアップを支援するSTART ME UP AWARDSも今年は、デジタルコンテンツEXPOの一環でやったらと誘われて、やることにした。(7/1に説明会兼キックオフイベントやるから来てね!)
ストリーミングサービスの到来は、時代の必然だし、新しい才能にとっては大きなチャンスだ、ディスりたい人は、面倒だからスルーして。次のステージで何ができるか考えようぜ。
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