2013年1月1日火曜日

独断的音楽ビジネス予測2013 〜音楽とITの不幸な歴史が終わり、構造変化が始まる年に〜


   新年、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します

 昨年は、トークイベントsensorを開始、二冊目の書籍を刊行メルマガの監修NHKFM「元春レイディオ・ショー」でラジオ初出演などなど、個人活動は充実していたけど、ブログの更新は、たった14回、、反省。「ちゃんと書こう」と思いすぎると後手に回るので、フットワーク軽く更新しよう。全く個人的なブログなのでカジュアルな文体で思ったことを直裁に書きますので、ご容赦を。
 さて、元旦につき、今年の音楽ビジネス予測。経済評論家が予測的中すると話題になるくらい、予測は当たらないもの。正月だけに当たるも八卦当たらぬも八卦ということで。ただ、去年の元旦の稿を読み直したところ、いい線いっているんじゃないかなぁ?


CD売上は、前年比一割以内の減少に留まる
2012年のCD売上は前年比微増。1割以内の減少という僕の予想を超える健闘ぶり。抜本的な改善策では無いけれど、頑張って売ったのは立派と言うべきだよね。

モバイル配信の変化もゆっくり進む
⇒ゆっくりとは言えないかも。モバイル向けは約4割減、スマフォを含むインターネット配信は約3割増というのが9月までの統計。配信全体では約25%減。この傾向はガラケーからスマフォへの転換が原因なので、まだ進行していくだろう。

ストリーミングサービスは本格始動しない
Spotifyが始まらないことも含めて、これは的中。

つまり、音楽ユーザーの消費行動はまだ大きく動かない
⇒レンタルCD業も前年比微増など、この予測も当たっていると思う。
 ということで、全体的な「読み」としては、概ね外れてなかったというのが自己採点なのですが、いかがでしょ?

 ということで、今年の独断的音楽ビジネス予測
 ずばり、変革が始まる年と予測したい!

 世界情勢も今年は構造変化が起こり得る年。米国ではオバマが再選、ロシアではプーチンが大統領に復帰。中国は習近平の10年が始まることになった。韓国も大統領が替わった。安倍政権は来夏の参院選というハードルがあるけれど、暫くは日本の政治も安定しそうだ。
 特に10年に一度の政治の季節を超えた中国との今後は重要だと思う。日本の音楽事務所が中国で稼げるようになるという意味では、もう少し時間が掛かると思うけれど、コンテンツ産業振興というマクロな視点は、日本に求められる役割はあるし、チャンスはあると思う。この事は、色々考えているので、改めて書くつもり。

 さて、音楽ビジネスの2013年は、、。

パッケージ売上は現状維持。CD店をネットと連動させて活用
 昨年の売上は大物ベテランアーティストのベスト盤の貢献も大きかったから、さすがに今年も売上増というのはさすがに難しいだろう。ただ、CDを買う可能性がある層(世代)に、あの手この手で買わせる努力は今年も続くと思う。特に、日本は、他国では姿を消したCD専門チェーン店があるのが大きい。タワーレコード、ローソンHMVTSUTAYAは、親会社に大きな資本があるし、新星堂も北関東の雄ワンダーコーポレーションが買収した。それぞれの企業戦略の中で、ショップを活用していくことだろう。
ITマーケティングの世界ではO2O(オンライントゥオフライン)という言葉が流行ったけれど、まさにCD店こそO2Oの拠点として適していると僕は思う。古い規格のCD(コンパクトディスク)に固執せずに、高音質パッケージやパーソナルクラウドとの連動(買った瞬間からスマフォで聞ける)にも取り組んで欲しい。最近は、アナログ盤の人気復活の気配もある。
 また、レコード会社主導のプレイヤー販売も課題だ。今、CDプレイヤーが壊れたときに、買い換えてくれるユーザーはどれだけいるだろうか?PCでも例えば、MacBook AirCDドライブは内蔵してない。タブレットはもちろん。CDを売るにはCDプレイヤーから売る時代になっていることを自覚すべきだと思う。アニバーサリー企画でのアーティストモデルなど、ソフトを売るためのハードの販売を考える時代になっているのだ。

●ストリーミングサービスが本格開始する
 欧米で500万人以上の有料会員を抱えるSpotifyが、遂に日本サービスを始まるようだ。詳しくはここには書けないけれど、レーベルとの交渉も始まっている。サービス開始は秋になるようだけれど、新しい音楽の聴き方、楽しみ方が広まっていくことは間違いない。
着うたの覇者だったレコチョクも、まもなくストリーミングサービスを始めるようだし、異業種からの参入の噂もある。聞き放題で月額課金というビジネスモデルと、友人達と音楽を共有するという習慣が広まっていくはずだ。
 個人的には、2015年に売上3000億円の目標で取り組んで欲しいと思っている。パッケージとストリーミングはカニバルどころか、相乗効果がある。パッケージ店網が残っている間にストリーミングサービスが広まれば、日本の音楽市場が、世界に類を見ない好バランスになる期待が持てる。

●レコード会社がインターネット上に音源を解放し始める
 ストリーミングサービスが広まるには、多くの音源の許諾窓口となっているレコード会社の姿勢がポイントになる。これが変わってきた。理由は二つ。欧米でストリーミングサービスが広まるとダウンロードやパッケージの売り上げにもプラスになる統計データがでてきたこと。ユニバーサルやワーナーは親会社が欧米だから情報も早い。レコード業界全体に伝わっている。
 もう一つは、ネット界隈では不評の違法ダウンロード刑罰化の影響。あの法案が通ったことで、レコード会社の経営陣は、合法にネット上で音楽が聴ける環境を提供するという社会的な責任を負った。DRMを外したり、ソニーミュージックエンタテインメントがiTunesに楽曲を提供したりというのもその流れの一環だ。

 レコード業界は、直接契約を結んだ「特約店」でレコード〜CDを売ってきたという歴史がある。配信でもガラケー向けでは「レコチョク」は成功した。そのせいで「自分の目の届くところでだけ売りたい」と思う性癖を持っていたけれど、そろそろ方針転換をしようとしてくれているようだ。膨大なカタログをマネタイズするためにも、一定のルールに則って、許諾を幅広く出していく方向を推し進めてくれることと期待している。

コンテンツの海外輸出が本格的にはじまる
 これは、予測では無くて、希望的観測と努力目標。
 経産省が計画している「クールジャパン」ファンド800億円の使い途に注目。これまで経産省は失敗し続けているので、安倍政権の指導力に期待したい。ただ実は、方法論は難しくない。韓国がやってきたことの真似をすれば良いだけだ。
 海外のメディア枠を買い、日本と海外のギャップで生じる日本の権利者の不利益分(の一部)をまかなって、日本のコンテンツをアジアなどの新興国で流せば、間違いなく結果はついてくる。今なら、まだ日本のポップカルチャーのブランドとコンテンツ力は有効だ。
 中期的には、海外売上が国内と同等になることを目指すべきだと思う。韓国は、自国の数倍の売上を海外からあげているのだし。

 機は熟している、言い換えれば、待った無しで今年を逃すと、衰退する。音楽業界にとってそんな分岐点の年。2013年は、本当に重要な年だなと思う。楽曲がデジタルファイルに変換できるようになってから続いてきた音楽とIT技術の軋轢の歴史が終わる年。
 個人的にも、テーマに掲げてきた、ソーシャルメディア活用、グローバル、異業種コラボレーションの3つを踏まえて、具体の結果を出す年にせねばなりますまいと、誓う正月であります。
新年早々、告知件!

⇒昨年10月刊行の『ソーシャル時代に音楽を"売る"7つの戦略』(リットーミュージック)の発展形としてメールマガジンを始めました。「音楽人養成メルマガ」は、毎週火曜日発行。 監修しながら自画自賛で申し訳ないですが、毎週、面白いなと思ってます。まだの方は是非、ご購読を!

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