2014年8月20日水曜日

ろくでなし子逮捕と署名運動について

 だいぶ間が抜けたタイミングでの投稿になるけれど、変な論説が多い気がして、書くことにした。前衛芸術家ろくでなし子の3Dプリンターでの女性器頒布と逮捕について、僕の個人的な見解をまとめておきたい。
 その話は何?という人は、とりあえず、下記の記事をどうぞ。

●なぜ「自称」芸術家? 「ろくでなし子」氏逮捕の深層 女性器3Dデータは「わいせつ」か「芸術」か


まずは、前衛芸術家のスタンスについて。

◆前衛芸術家は反体制であるし、反社会的であることが存在意義

 僕は、正直、逮捕が不当と騒ぐ人達の多くの論旨が理解できなかった。「悪いことをしていないのに逮捕されて可哀想」みたいな言説は、芸術家と名乗っているろくでなし子にたいして、むしろ失礼だと思う。
 前衛芸術の定義は人それぞれでよいけれど、基本的には、既存の価値観に対するアンチテーゼ、当たり前と思っていることを疑わせる、認識を改めさせるというのが、本人の意思はともかくとして、社会的には役割であるはずだ。その意味で、3Dプリンターという従来の価値観を揺るがすツールを使って問題定義するというスタンスはとても正しい。
 そもそも「ろくでなし子」って名乗っているのだから、確信犯だと捉える方が自然でしょ?

 一方で、既得権益者は守旧的であるのが前提で、そういう意味で、今回のろくでなし子の表現を見逃さなかったのは、職務熱心であると捉えるべきで、逮捕された側は名誉なことだし逮捕した方は、さぼらずにちゃんと仕事をしたというのが、客観的なとらえ方だと僕は思う。

 その事件を「自称芸術家」という言い方で報道したメディアの責任放棄は、批判されるべきとは思う。「お前は体制側の犬なのね」という烙印を押すには値する。
 一方で、警察に対して、ことさらに、「不当逮捕」だと言いたてるのは、警察に対する期待値が高すぎると思う。体制側のオペレーションを担う役所は、既存の価値観を揺るがす行為は否定するのが、そもそもの立ち位置だ。逮捕自体は、むしろ「正当」だと僕は思う。

◆留置所への長期拘留は不当ということ

 ろくでなし子が、自己の確信犯的な表現で警察に逮捕されたことは、体制側が、しっかり「敵」と見なしたという意味で、芸術家としては、むしろ名誉なことであるはずだ。万が一、逮捕される覚悟がなくやっていたとしたら、それはそもそも、「前衛芸術家」を「自称」する資格が無かったことを意味する。まったく私見だけれど、体制側に抑圧された方が、前衛芸術家の表現のクオリティは高くなると僕は、当然のこととして思っている。
 ただ、それも程度問題で、極論で言うと、体制側が不快なことをしたら即、殺されるみたいなことだとしたら、論外だ。芸術家には成長するプロセスは必要だし、政府の弾圧や、社会の偏見の目を知って、活きる表現もあるはずだ。

 さて、ろくでなし子について、釈放を求める署名運動が行われた。

●「ろくでなし子」の即時釈放もとめる「署名活動」ネットで展開・・・賛同者が急増

 僕が、このネット署名運動に参加して、署名したのは、まず一義的には、たかだか「オ××コ」をつくっただけで、留置所に長期拘留するのは、警察の横暴が過ぎると思ったからだ。日本がこれから文化国家として活きていくしか無い時代に。多様性を認めないのは問題だし、そもそも西洋に対する東洋の知的優位性は、性的なものも含む寛容性であるはずだ。そして、ともかく、牢屋に入れて反省させるという警察のやり方には、しっかりNOを伝える必要はある。
 気分で言うと、風営法によるクラブ摘発問題に対する反感もある。「警察とヤクザは紙一重」という論説に僕は与しないけれど、やみくもに社会浄化を求める近年の警察のスタンスは、ちょっとバランス悪すぎるし、日本の国益にとってマイナスだ。法律を拡大解釈して、カルチャーを抑圧すると、強い批判を浴びるということは伝えたいと思う。

◆ネット署名についての見解

 「.org」の活動はリスペクトするけれど、僕が個人的に気をつけるのは、むやみに「賛同ボタン」を押さないことだ。
 ネットでの署名運動は、良いことだと思うけれど、一ユーザーの立場で言うと、気軽に、手軽に、署名ができてしまって、深く考えたり、調べたりせずに、気分で署名しそうになるのが、マイナス面だ。自分なりにしっかり情報を分析して、立場をはっきりさせてから、署名するかどうか決めた方が良い。
 
◆3Dプリンターが僕らに投げかけていること

 このエントリーからは枝葉になるけれど、今回の「事件」が3Dプリンターで起きているのは事実、3Dプリンターとい存在が、従来の社会常識を揺るがしているのは間違いないし。警察に恐怖感があったから、勇み足的な逮捕になったという側面もあると思う。
 3Dプリンターとそのネットワーク化は、社会を根本から改革する可能性を秘めているのだと改めて思った。

 様々なことを考えさせられる事件で、そういう意味で、前衛芸術家「ろくでなし子」は、まさに定義される意味の前衛芸術家として、功績があったと僕は思う。

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