2011年5月30日月曜日

極私的世界史観~僕が歴史を学ぶ理由~

 いくつになっても好奇心と向上心を持って、勉強することは大事だと思う。何でも興味が湧いたことをやればいいのだけれど、大人になって、誰にとっても勉強する「べき」ことって、歴史を学ぶことと外国語を習得することの2つ位しか無いんじゃない?って、最近は思うようになった。


 杉山正明著『クビライの挑戦~モンゴルによる世界史の大転回~』(講談社学術文庫)を読んだ。
とても面白い。1995年にサントリー学芸賞を受賞した本だとか。全然知らなかった。不明を恥じた。
 
 モンゴルには、2004年に馬頭琴とホーミーのレコーディングをするために、ウランバートルに滞在したことがある。(その時のことは、以前、こちらに書きました。)
モンゴル人は愛想は無いけれど、親日的だ。そして、決して豊かな国では無かったけれど、
「俺たち世界一になったことあるゼ」的なプライドを感じて、ますます好きになった。
その頃の僕には「騎馬民族で戦争が強かったんだよね」位の認識しか無かったけれど、、。

モンゴル民族を中心とした「モンゴル帝国」の成立は世界史的に非常に大きな転回点になったというのがこの本の主旨だ。
 ユーラシア大陸全体が、一つの通商圏になったこと、おそらく人類史で初めて、人が「世界」を意識したのではないかという問いかけは、非常に興味深い。
 面白かったのは、モンゴル帝国は、民族、宗教などに関係なく人材登用をしたこと、基本的なルールを守れば、属国の「自治」は尊重したこと。人や物の往来をできるだけ自由にして通商を盛んにしようとしたこと、などで、いずれも現代にも通じる価値観だ。
 
 寛容な支配というのは、ローマ帝国にも通じるなと思った。


 高校時代に受験対策以外の世界史をさぼったせいで、世界史の把握が浅かった。グローバルに仕事をしようと思うと、各国の文化や歴史を最低限を知る必要がある。そんな時に、世界史全体の流れを自分なりに持っていないと、ただの「豆知識」になってしまう。
 「教養」というには恥ずかしい「鼻クソ」みたいなものだけれど、自分なりのとらえ方は持っておきたいと思って、10年位前から、歴史に関する本を読むようになった。
 西洋史の勉強が必要だなと思って、いろいろ探しているウチに、見つけたのが塩野七生の『ローマ人の物語』(新潮文庫)だった。


 正確に言うと、『痛快ローマ学』(集英社インターナショナル)という図解付きダイジェスト本(ローマ史が初めての方にはオススメです)を見つけたのがきっかけで、『ローマ人の物語』をシリーズで読み始めた。
 このシリーズは、分厚い単行本で全15巻(文庫では全40巻)もある。最初は、文庫で読んでいたけれど、そのうち文庫化されている分は追いついてしまい、単行本を読み始め、遂には毎年1冊ずつでるのを待つようになった。
 2006年にシリーズが終了したが、それこそ人類史に残る力作だ。塩野七生の『ローマ人の物語』は、ローマの歴史を描いた傑作として、世界中で読み続けられると思う。
 塩野さんはルネッサンス期に関する作品もあり(ヴェネツイアを描いた『海の都の物語』も超お薦めです!)僕はお陰で、西洋史に対して、自分なりの見解を持つことができるようになった。
 司馬遼太郎さんの愛読者は「司馬史観」を持つというけれど(司馬遼太郎もファンです)、僕は、西洋史に関して、「塩野史観」の影響を強く受けている。


 自分なりに咀嚼して、思いっきり乱暴に言うと、
「僕の好きなヨーロッパはローマ(とギリシャ)がルーツの価値観で、良くないと思うところは、キリスト教(教会)の影響下の事象なんだな」
ということ。
自分の中にあった、「欧米的な価値観で好きなところと、悪いと思うところ」が、随分、綺麗に色分けできた。
それは、もっとざっくり言うと、「多様性を認める」ということ。
(キリスト教教会も改革の歴史があるので、キリスト教がダメという意味では無いけどね。)
 ローマ帝国も民族、宗教に対しては、寛容であるのが基本的なスタンス。


 そして、今の時代が「パックスアメリカーナ=アメリカによって世界秩序が形作られている時代」だとしたら、ローマ帝国やモンゴル帝国が主役だった時代に比べて、優れているところは、ほとんど無い気がする。
 武器が槍や鉄砲から、コンピューター制御のミサイルになったことって、進歩って言うのかな?
 戦争を始める理由や阻止する方法論、終らせる時の論理が優れている事の方が人類の智恵だと僕は思うのだけれど、その観点で言うと、人類は2000年掛けて、全く進歩していない、というか、ローマ帝国市民の方がアメリカ合衆国国民(もちろん同盟国の日本人も同罪だけど)よりも、ずっと智恵を持っていたのは間違いない。


 僕はいわゆる「反原発」論者でじゃないけれど、原発問題についても、人類の智恵と進歩
みたいな観点で、もっと謙虚に、かつ長期的な視野で捉えるべきだと思う。
 歴史上に沢山登場する「滅びていった国」に、長い歴史を持つ日本がならないために、今回の原発事故が没落の始まりにならないために、どうすれば良いのか考えたい。

 ちょっと話が大きくなったけど、歴史を学ぶって、そういう事だと、僕は思っている。

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